16 September 2025

6年ぶりの燕岳 : 中房温泉から燕山荘

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行程 時刻 所要時間
中房温泉 (1460m) 〜 第2ベンチ (1840m) 07:46 〜 08:26 40分
休憩 8分
第2ベンチ 〜 富士見ベンチ (2210m) 08:34 〜 09:18 44分
富士見ベンチ 〜 合戦小屋 (2380m) 09:26 〜 09:45 19分
休憩 12分
合戦小屋 〜 燕山荘 (2700m) 09:57 〜 10:44 47分
休憩・昼食
燕山荘 〜 燕岳 (2762m) 12:00 〜 12:23 23分
燕岳 〜 燕山荘 12:34 〜 13:11 37分
休憩
燕山荘 〜 蛙岩 (2680m) 13:44 〜 14:18 34分
蛙岩 〜 燕山荘 14:18 〜 14:52 34分
燕山荘 泊
燕山荘 〜 合戦小屋 05:47 〜 06:20 33分
休憩 13分
合戦小屋 〜 中房温泉 06:33 〜 07:52 1時間19分

地質

今回のコースは、すべて花崗岩の地域を通っている。あの独特な燕岳の姿も、花崗岩が凍結破砕・風化してザレザレになった結果だ。

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地質図

植生

植生は、登山口付近はミズナラ、登山口から合戦小屋まではカラマツ植林・ダケカンバ・コメツガ・シラビソと移り変わっていく。合戦小屋から上は森林限界を突破して、ササとダケカンバの低木となり、そしてハイマツ帯に入って燕山荘に至る。燕山荘周辺は花崗岩が風化してできた砂礫地・風衝草原ということだ。有名なコマクサの群落も砂礫地にある。

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植生図

中房温泉より合戦尾根を登り合戦小屋へ

中房温泉 〜 第1ベンチ : 0.5km, 1,460m → 1,670m

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7時45分、中房温泉の登山口より登り始める

バスに乗ってきた約100人の登山者が、ほぼ同時に登り始めるわけだから、団子状態になっている。

どんどん追い抜いていく。

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登山口を入るとすぐに急登。木の根に足を掛けてよじ登るところも多い

写真に写っている大きな木は、広葉樹のミズナラ。中房温泉付近はまだ広葉樹林帯だ。

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急登を登りながら、ミズナラからカラマツに風景が移り変わるのを観察する

登山口から第1ベンチまで、距離500mに対して標高差が210mある。単純計算するとatan(210/500) = 23° となり、かなりなものだ。

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急登を15分ほど登ると、尾根筋に出て道は平らに。カラマツ植林の中を歩く

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尾根筋に出て道が平らになったらすぐ、第1ベンチに到着(標高約1,670m)

登山口から第1ベンチまで、距離500m・標高差210m(1,460m→1,670m)を21分ほどで歩いてきた。この間、少なくとも10から20人ほどを追い抜いている。

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第1ベンチの直下には水場があるようです

Web検索すると、斜面をチョロチョロ流れる表層水を汲むことができるそうだ。登山口のような「流し台に給水栓」のようなものではないので、わざわざここで汲む必要はないように思う。

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第1ベンチの道標。登山口から1.0kmと書かれているが、GPSログでは500mほどでしかない

第1ベンチ付近で10人ほどの登山者が休憩しているので、ここで労せず大量追い抜きができる。

第1ベンチ 〜 第2ベンチ (貨物索道交差) : 0.4km, 1,670m → 1,840m

第1ベンチをすぎると、山道の傾斜は少し緩やかになる。それでも、登り坂がずっと続く。

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合戦沢の斜面は美しいダケカンバの林とササ薮

樹林帯の急登を登るとき、視線は常に地面の方を向いているが、マムシグサの真っ赤な実につい見とれてしまった。

富士見ベンチ付近までは、鮮やかな色の花や実はほとんど見かけなかったので、このマムシグサは印象に残っている。その他には、脚が糸のように細くて長い真っ黒な蜘蛛が地面を歩いているのをたまに見かけた。

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マムシグサの実

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振り返ると、急登を登る登山者が連なっている。このあたりもカラマツ植林が続く

植生図ではダケカンバ群落となっているが、登山道の周辺はカラマツが植林されている所も多い。

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多くの場所では木段が整備されているが、木の根が張った斜面をよじ登る場所などもある

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合戦小屋に荷物を運ぶ貨物索道の下をくぐり抜けるとすぐに第2ベンチがある

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第2ベンチ (標高約1,840m)

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10分ほど休憩し調理パンとゼリー飲料で栄養補給

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第2ベンチの道標。やはり登山口からの距離がおかしい(道標の表記 1.7km, GPS記録計測 0.9km)

第2ベンチ 〜 第3ベンチ : 0.7km, 1,840m → 2,000m

第2ベンチから先はコメツガの林になる。尾根筋の道の傾斜はさらに緩やかになる。

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コメツガの林の中で空が開けた場所。曇っている

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第3ベンチ (標高約2,000m)

ここも休憩無しで通過。かなりの数の登山者を追い抜いてきたが、まだ前を歩く人がチラホラと見える。

第3ベンチ 〜 富士見ベンチ : 0.4km, 2,000m → 2,200m

ここから再び急登がはじまる。

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崩れかけた木段。登るときは問題ないが、下りは慎重に歩いたほうが良さそう

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アキノキリンソウ

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ゴゼンタチバナ

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タケシマラン (ユリ科)

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富士見ベンチ (標高約2,200m)

富士見ベンチに到着。たくさんの登山者を追い抜いたので、ここまで来ると人の数は少なめになってくる。

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富士見ベンチの道標。やはり中房温泉までの距離がおかしい (道標の表記 3.1km, GPSの実測 2.0km)

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富士見ベンチで栄養補給

富士見ベンチ 〜 合戦小屋 : 0.5km, 2,200m → 2,380m

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オオカメノキ

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標高2,300m付近で背の高い樹林帯を抜け、中低木の明るい場所に出る

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シラビソの幹に「合戦小屋まで10分」の標識

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西側の視界が開け、表銀座の稜線(横通岳〜大天井岳〜大下りノ頭)が一望できる

中房温泉の登山口を出発してちょうど2時間、合戦小屋に到着。歩いた距離は2.57km、標高差920mを登ってきた。

上り坂の連続で獲得標高を失うことのない効率的な登山道なので、たったの2時間で「六甲山に登るときと同じ標高差」に到達できた。

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合戦小屋 (標高約2,380m)

小屋の前には高齢の登山者グループが何組か休憩していたりする。有明荘に前泊して登ったと後から聞いたので、彼らがそうなのだろう。穂高駅発のバスに乗っていた登山者全てを追い越しても、まだ先を行く登山者を見かけるはずだ...

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合戦小屋のトイレ前に、ものすごくきれいに色づいたナナカマドの実が多数

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どら焼きとゼリー飲料で栄養補給

合戦小屋から燕山荘へ

合戦小屋 〜 合戦沢ノ頭 : 0.3km, 2,380m → 2,488m

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ダケカンバ、ナナカマド、ササといった中低木の木立の中を登っていく

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オヤマリンドウ

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登山道脇に設置された「登山者カウンター」

2016年7月に環境省が設置したものらしい。

登山者数の把握は「中部山岳国立公園南部地域利用の高付加価値化に向けた基本構想」のような報告書を作成するときのデータに使うのだろう。しかし、個別のカウンターごとの詳細データは全く公表されておらず、https://www.e-stat.go.jp のようなサイトに登録してほしいものだ。

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合戦沢ノ頭まで標高差200mの九十九折の道を一気に登る

紅葉は始まったばかりで、ごく一部のナナカマドが色づいているくらい。

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ごく一部のナナカマドが、真っ赤に紅葉している

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北中川谷を挟んだ向こうに表銀座の稜線(大天井岳〜常念岳)

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槍ヶ岳がチラッと見えた

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ヤマハハコ

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合戦沢ノ頭。三等三角点「濁沢」(2488.14m)がある

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合戦沢ノ頭から、表銀座の稜線(大天井岳〜常念岳)と槍ヶ岳の眺め

合戦沢ノ頭 〜 燕山荘 : 1.1km, 2,488m → 2,700m

ここから先は、とても緩やかな尾根筋を登る。

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合戦尾根の尾根筋を歩く。斜め右に燕岳が見える

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登山道の両側の木々が、程よく紅葉している

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黄色く色づき始めたミネカエデ (最盛期には濃いオレンジ色になる)

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ニシキギの一種

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安山岩の露頭を通過

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ちょっとした岩場をトラバース。ロープや鎖が複数張られて安全対策バッチリ

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前方に燕山荘から燕岳・北燕岳までの稜線が姿をあらわす

燕山荘の直下、稜線の風下側はお花畑になっていて、何種類かの花が咲いている。

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燕山荘直下の斜面。キク科の白い花(ムカシヨモギ?)が一面に咲いている

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アザミ

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ミヤマトリカブト

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常念山脈(表銀座)の稜線、燕山荘前に到着

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燕山荘の本館正面

中房温泉の登山口から燕山荘まで、距離4.0km・標高差1,240mを休憩時間込みで3時間調度で歩いてきた。

登山口を出発した時点では中層雲が空一面に広がっていたが、合戦小屋に着く頃には雲が切れて晴れ間が出てきて、燕山荘に到着する頃には快晴となっていた。またとない好天だ。