15 September 2025, Monday

6年ぶりの燕岳 : 準備編

9月になり、連続した晴天日の予報が全く無い。平日で1日だけ晴天の予報となった3連休明けに燕岳に向かうこととした。

もくじ

  1. 6年ぶりの燕岳 : 準備編
  2. 6年ぶりの燕岳 : 大阪から松本経由で中房温泉登山口へ
  3. 6年ぶりの燕岳 : 中房温泉から燕山荘
  4. 6年ぶりの燕岳 : 表銀座稜線を歩く。燕岳と蛙岩を往復
  5. 6年ぶりの燕岳 : 燕山荘に一泊し下山
  6. ヤマレコの記事 『燕岳と蛙岩

天気予報

少なくとも1日は晴天、行動予定の時間帯の全てで雨が降らないことが前提となるため、天気予報は重要。

毎日のように天気予報データとにらめっこし、9月16日(火曜日)と17日(水曜日)に登山日を決定。

予報では1日目は高気圧に覆われ晴天、夜中に日本海側から秋雨前線が南下し近づくので未明に雨が降る可能性が高く、下山時は曇り時々晴れ。この予報なら、素晴らしいが実際に行ってみてどうなるか...。

気象庁

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9月16日(登山1日目)の予想天気図

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長野県と富山県の天気予報

Mountain Weather Forecast

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Mountain Weather Forecast (出発直前 2025/9/15 6:00現在)

てんくら

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GPV

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Windy.com

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数値予報サイトの比較

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雲予想 9月16日9時

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雲予想 9月16日15時

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雲予想 9月16日21時

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雲予想 9月17日07時

ちょうど下山の時間帯、7時〜10時のあたりで雨になる予想となっている。

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雲予想 9月17日10時

Open-Meteo

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MSM雲量・降水量・気温予想

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OpenMeteo MSM雲量・降水量・気温予想(出発直前 9/15 6:00時点)

IMOC 国際気象海洋

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IMOC 降水確率

天気予報の答え合わせ

最も近い気象観測ポイントは槍ヶ岳山荘と思われるので、そこのデータを転載する。

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晴れたのは登山前日の15日(月・祝)と16日(火)。雨が降ったのは登山前日の15日早朝、17日未明、18日の日中。

気温は17日(火)は最低気温8℃・最高気温14℃。18日(水)は最低気温8℃・最高気温10℃。その後は気温はどんどん降下して一気に秋・冬の天候になっている。

ということで天気予報は的確だったし、このタイミングを逃すと一気に秋・冬を覚悟した登山になっていたかもしれない。(燕山荘から蛙岩までの稜線は、17日遺構は強風で冬山装備が必要と指摘したヤマテンの予報は的確)

装備

荷物のパッキング

小屋泊の1泊2日で食糧を全て持っていく荷物の重さは、約7kg前後。

ザック25リットル(deuter spider 25)1.1kg
レインウエアミズノ ベルテックEX ストームセイバー V0.69kg
トレッキングポールAonijie ウルトラライト 110cm 2本0.32kg
食料アルファ米1個, ミールブロック3箱, バウムクーヘン2切れ, どら焼き1個, 羊羹2個, グラノーラ1回分, おにぎり2個, ゼリー飲料3個, フィッシュソーセージ3本, ステンレスカップ, スプーン1.86kg
電化製品スマートフォン 2台, デジカメ DSC-RX100, ACアダプタ, USBケーブル, LEDヘッドランプ GENTOS Explorer1.5kg
雨具ザックレインカバー0.11kg
衣類帽子, 軍手, サングラス(ゴーグル), 予備下着とTシャツ, タオル0.76kg
救急キットテーピング, 包帯, 傷テープ, 小型はさみ, 細引き1m0.1kg
飲料水ナルゲンボトル, ペットボトル 500ml
その他財布, 小銭入れ, トイレットロール
合計6.4kg

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食糧計画

質量 g kcal タンパク質 g 合計個数 1日目
9/16(火)
2日目
9/17(水)
予備
行動食 行動食
※外食 等(例 牛丼大盛)93322.311
尾西 五目ごはん(アルファ米)1003776.911
トップバリュ ライトミールブロック 1/2箱38188.51.5522
トップバリュ プロテインブロック 1/2箱38185114112
バウムクーヘン803364.3211
どら焼き80215411
金城小倉羊羹1303644211
トップバリュ プロテイングラノーラ5021113.511
コンビニおにぎり1202153211
ロールパン6個入り250636150
サラダチキン3パック 1個666211.50
トップバリュ ENERGY1801801800321
inゼリー ENERGY18018000
フィッシュソーセージ651086.13111
質量 (g)合計
1853
06903232331453100152
カロリー (kcal)合計
4614
011548858404445440747
タンパク質 (g)合計
112.4
0112734.910.44025.1


必要なエネルギー量とタンパク質量は、厚労省の標準データより エネルギー 3,100 kcal/日 , タンパク質 65g/日 が不足なく摂取できるように、かつ質量が軽くなるよう計算した。

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1日に必要なエネルギー量(厚労省日本人の食事摂取基準(2020年版)スライド集より)

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1日に必要なタンパク質の量(厚労省日本人の食事摂取基準(2020年版)スライド集より)

予算

実際に支出した金額

適用金額
往路 バス 大阪→松本6,700円
昼食 アルピコプラザB1F 弁当,ほうれんそう610円
夕食 アルピコプラザB1F 弁当,卵ロール541円
松本 ネットカフェ 泊3,783円
朝食 松屋 モーニング400円
鉄道 松本→穂高330円
バス 穂高→中房温泉1,500円
燕山荘 泊(素泊まり)10,000円
バス 中房温泉→穂高1,500円
鉄道 穂高→松本330円
昼食 松屋 モーニング400円
鉄道 松本→大阪(特急・新幹線 自由席)11,110円
合計金額37,204円

これ以外に、食糧として持参したアルファ米やミールブロック等の金額は 約2,000円。

特急・新幹線 乗らずに節約するかどうか

特急・新幹線に乗る・乗らない場合の所要時間と運賃比較をしてみた。大垣・米原での乗り継ぎと東海道線の遅延を考慮すれば、中央線は普通・快速乗り継ぎで東海道線は新幹線に乗るのが「妥当な選択肢」かもしれない。

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山小屋の過度な商業主義と、遭難の必然

私が燕山荘に宿泊した日ではないが、直近の日に相次いで「恥ずかしい遭難」が起きている。

夕食時のビールが原因で脳虚血症の可能性も「立ち上がったら倒れた」山小屋で70歳の女性が一時意識不明に 一夜明け救助隊に背負われるなどして下山し病院へ搬送 長野・北アルプス・燕岳
北アルプスの燕岳の山小屋で、夕食の際にビールを飲んだ70歳の女性が、食後に倒れて一時意識がなくなり、一夜明けた18日午前、救助されました。

その後女性は意識を回復し、一夜明けた18日の早朝から、山小屋の関係者と下山を始め、途中で安曇野警察署山岳遭難救助隊員と北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会の救助隊員と合流して、背負われたり、自力で歩いたりしながら中房登山口に下山したということで、午後0時半前に待機していた救急隊に引き継いで安曇野市内の病院に搬送されました。

女性は、17日に山岳会の仲間11人パーティで1泊2日の予定で中房登山口から入山し、燕岳に登った後、山小屋に滞在していました。

女性は、夕食の際に、ビールをジョッキで飲んでいたということで、山小屋の関係者が、医療関係者に聞いたところ、体が熱いなどの熱中症や、脱水症の症状がある時にアルコールを飲んだ場合に、一時的に脳に十分な血液が供給されない脳虚血症のような状態になる可能性があると指摘されたということで、特に標高が高いところでのアルコールの摂取には、改めて注意が必要となりそうです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2550cb295d5cb328e20e205ea8f2c07e420b75fb
「ぎっくり腰になり下山できない」福岡市の女性(58)をヘリコプターで救助 山小屋で靴ひもを結ぼうとした時に 北アルプス燕岳で遭難/長野
警察によりますと、女性は9日朝、燕岳の山小屋(標高約2700m)で下山に向けて靴を履いていた時、腰痛で行動不能になったということです。

本人から午前7時前、「靴ひもを結ぼうとしたとき、ぎっくり腰になってしまった」と安曇野警察署に救助要請があり、午前9時過ぎ、長野県警のヘリコプターで救助して、松本市内の病院に搬送しました。

https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/?cid=24945

そもそもこれは自己責任の範疇で、救助すべきものではないと思う。自力下山できるまで何日でも小屋で安静にしていればよかろう。(1泊1万円は当然負担させる)

前者のニュースなら、山岳会の仲間11人が命をかけてでも交互に担いで下ろすべきもの。山岳会というのは趣味の登山サークルではない。まして遭対協の人たちや警察・消防をタダで使うべきものでもなかろう。

そして、これらの問題の根本にあるのは、山を「命がかかったスポーツ、チャレンジ」の場ではなく、単なるおしゃれな観光地としたい山小屋を含む観光業界の問題のような気がする。(政府をあげて北アルプスをインバウンド公害相手のおしゃれな観光地にしたいと表明している)

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燕山荘の軽食・喫茶の販売窓口

山小屋は「規模の不経済(規模拡大のジレンマ)」に陥っていて、5,000円もするような超割高な夕食・朝食をセット料金とするだけでは経営が成り立たず、ビールやケーキ、おつまみと嗜好品を売りまくって収入を得ないといけない状態だ。

この経営上の問題を見抜かず、単に「山の上にも瀟洒なカフェがある」程度にしか感じない人たちが、安易に登山して「遭難」が増えてしまう。

安易な観光地化、挙句の果にインバウンド公害を大量誘引という悪循環をどこかで止めないと、(山小屋だけでなく、治山対策や救難救助の行政費用も含めた)全体としての費用対効果の得られないものに成り果てるかもしれない。

京都と同じく、あまりのインバウンド公害の酷さに日本人登山者が離れてしまい、(バックエンドの行政コストを負担しない)外人だけがチャラく遊び回る北アルプスになっては欲しくないと個人的には感じる。

そういえば、私が宿泊した日にも...

燕山荘の第一別館で昼寝していたら、すぐ近くの2段寝床から「ドスン」と人が落っこちる音が響いた。近くに居た人たちが「頭打ってませんか」とか聞いていたが、高齢者がタラップを踏み外したのが原因だったようだ。

頭の打ちどころが悪ければ、岩場で滑落して遭難ではなく、小屋の蚕棚のタラップから滑落して遭難になるところだ。

危険はあらゆる場所に潜んでいる...

そもそも、3点支持ができずベッドのタラップから落ちるような高齢者が、3,000m級の山に登るべきではないなぁと感じる。

話は変わるが、中房温泉から燕山荘に登ってくるとき、第三ベンチ付近で下山してきた高齢者登山ツアーの人たちとすれ違った。その時に目撃した「驚愕した光景」。まるで警官が逮捕した犯人を腰縄を付けて護送するかのように、登山ガイドが高齢登山者の腰にロープを結んで安全確保しながら登山道を降りてきたのだ。

単なる木段の登山道で腰縄をされた人を見たら、そりゃあ、犯人護送としか思えんでしょう...。

こんな高齢者まで「登山できますよ」と客集めしているようでは、観光業界も終わってる感ある。