05 September 2024

立山登山(その1) 富山市内で前泊、黒部ダム見学後、室堂 雷鳥沢野営場へ

もくじ

9月4日(水曜) : 大阪から富山へ

立山黒部アルペンきっぷ

今回の立山テント泊は、JRの特別企画乗車券「立山黒部アルペンきっぷ」を使って出かけることとする。

20240904-jr-alpenkippu-01.jpg 20240904-jr-alpenkippu-02.jpg
JR西日本 「立山黒部アルペンきっぷ」パンフレット

大阪発のきっぷの価格は去年が26,940円、今年は29,540円。

値上がり幅が9.7%(2,600円)と消費者物価指数 CPI(7月の前年同月比 総合指数+2.8%,交通+1.2%)を遥かに上回るボッタクリ値上げだが、個別に切符を買う場合と企画乗車券の費用比較はつぎのようになり、今回の旅程では1万円の割引になっている。

区間通常運賃アルペンきっぷ
大阪〜富山(運賃)5,720円
(特急料金)4,370円
29,540円
電鉄富山〜立山1,230円
立山〜黒部湖(往復)16,480円
立山〜電鉄富山1,230円
富山〜大阪(運賃)5,720円
(特急料金)4,370円
合計39,120円29,540円

自宅近所のJR新福島駅のみどりの窓口で切符を購入し、同時に往路の富山までの指定券予約をする。

20240904-jr-alpenkippu-04.jpg
立山黒部アルペンきっぷ(左上の往路券、右上の復路券の2枚組み)

大阪駅から富山駅へ

きっぷ購入後、JR環状線の福島駅まで歩き列車に乗車。

20240904-jr-fukusima.jpg
JR福島駅から環状線に1駅だけ乗車

■ JR環状線 福島駅 17:15発 → 大阪駅 17:17着

20240904-jr-osaka.jpg
JR大阪駅で特急サンダーバードに乗車する

■ JR京都線・湖西線 特急サンダーバード 大阪駅 17:40発 → 敦賀駅 19:00着

途中停車駅の京都を出た段階で、列車は窓際の席がすべて埋まっている程度の乗車率となる。出張から帰るサラリーマンがほとんどだ。

20240904-jr-thunderbird682-4313.jpg
特急サンダーバード 683系(B37編成 682-4313)の車内

夕暮れのオレンジ色からだんだん暗くなる琵琶湖の景色を眺めていると、すぐに敦賀駅に到着する。

北陸新幹線の延伸開業直後には、敦賀駅での乗り換え動線が長く列車の出発に間に合わない乗客が続出などと報道されていたが、全くそんなことはなかった。プラットホームが上下階に重なっていて、ほぼ最短コースで乗り換えられるので便利だと感じる。

20240904-jr-turuga.jpg
JR敦賀駅で北陸新幹線に乗り換え

■ JR北陸新幹線 つるぎ 敦賀駅 19:09発 → 富山駅 20:17着

新幹線も窓側の席が全てうまる程度の乗車率で、かなり空いている。

20240904-jr-w7-w8.jpg
北陸新幹線 W7系(W8編成)の車内

列車は長さ19.8kmの新北陸トンネルを通り抜けると、どんどん速度を上げて260km/hに達する。

在来線特急の最高速度は130km/h、北陸新幹線の最高速度は260km/hなので、敦賀より先は倍速で進むことになる。新幹線効果、恐るべしだ。

20240904-jr-maxspeed.jpg
在来線と新幹線の最高速度を、登山用GPSアプリで実際に測ってみた

今回乗車した「つるぎ号」は、福井・金沢・新高岡の3駅にしか停車しない速達列車だ。たった1時間ほどで富山駅に到着した。

富山駅から富山地鉄 新庄田中駅へ

JRの駅舎を出て、すぐ東隣にある電鉄富山駅へ。富山地鉄とアルペンルートの切符売り場があるが、どちらも営業時間外で閉まっている。連休などの混雑時期に、立山駅の窓口で販売制限に引っかからないため、ここで立山ケーブルカーの出発時刻の指定を受けた切符を買えるとのこと。明日は閑散期の平日なので、足切りに合う心配はまったくない。

20240904-dentetutoyama.jpg
電鉄富山駅のきっぷ売り場(営業時間:地鉄 07:00〜19:00、アルペン 07:30〜11:00)

20240904-dentetutoyama-02.jpg
電鉄富山駅で上市ゆきに乗車 (もと京阪電鉄3000系が、10030形として富山を走る)

■ 富山地鉄 電鉄富山駅 20:39発 → 新庄田中駅 20:43着

通勤客に混じって2駅ほど乗って、住宅街の無人駅で下車。JRの「立山黒部アルペンきっぷ」復路券で富山地鉄は8日間乗り放題になっている。

ネットカフェ 快活CLUBに宿泊

街灯が少ない住宅街を南へ。頭上には夏の大三角形などの1等星だけでなく、3等星くらいまでの星々が見えている。

大阪市内より遥かにたくさんの星が見える。

マクドナルドの駐車場を通り抜けて国道41号に出ると、すぐ東側に快活CLUBの巨大な建物がある。

20240904-kaikatutoyama-01.jpg
快活CLUB 富山荒川店(2014年オープンの店)

受付のお姉さんは、「平日なので1人分の料金で、ペアフラットシートが使える」と案内してくれたので、広めのそのブースを選択した。

20240904-kaikatutoyama-02.jpg
快活CLUB 広々したペアフラットシート

今回の登山は、当日の天気を見て急遽決めて荷造りしたので、いくつか忘れてきたものがある。その一つが45リットルのポリ袋。寝ている間、ザックをテントの外の地面においておくときに必須ツールだ。

快活CLUBの隣にローソンがあるので、そこでポリ袋を購入した。実際には2枚しか使わないが、10枚入り...。

20240904-gomibukuro.jpg
ローソンで購入した「富山地区広域圏 指定ごみ袋 45L×10枚」163円

9月5日(木曜) : 富山からアルペンルート観光

6時間ほど寝て、5時過ぎに起床。6時になると受付前に朝食用の「無料トースト」が出現。朝食付きで、12時間パック2,310円は登山の前泊には良い場所だ。

20240904-kaikatutoyama-03.jpg
快活CLUB 無料トースト

20240904-kaikatutoyama-04.jpg
朝食(トースト4枚、オレンジジュース、コーヒー)

6時55分に快活CLUBをチェックアウトし、5分ほど歩いて富山地鉄の新庄田中駅へ。

富山地鉄 新庄田中駅から立山駅へ

20240905-sinjyoutanaka.jpg
雲ひとつない快晴。国道41号の富山市街地方向

通勤時間帯なので、単線の路線だが次々と列車がやってくる。京阪電鉄の旧3000系電車や東急電鉄の旧8590系など、各社の車両がやってくるので楽しい眺めだ。

20240905-dentetu-sinjyoutanaka.jpg
富山地鉄 新庄田中駅から立山行きに乗車

■ 富山地鉄 新庄田中駅 07:15発 → 立山駅 08:16着

通学する高校生が下車すると、終点の立山駅まで2両編成の車内は窓側の席が全てうまる程度の乗車率。1車両にクロスシートが12列なので、1両あたり24人、2両編成で50人ほどの乗客数だ。このうち半数は通勤客風なので、立山ケーブルカーに乗り継ぐのは多く見積もって30人くらいか...。

ケーブルカーの定員は120人だそうなので、積み残しは起こらないだろう。

有峰口駅で登山スタイルの女性が2名下車したが、この時期は折立行きのバスは休日にしか出ていないはずだ。タクシーで行くのだろうか。Google検索すると、運賃は15,000円くらいだそうだ。

アルペンルート : 立山駅から黒部湖駅へ

20240906-alpenroute-map.png

立山駅に到着し、駅前ロータリーに面したアルペンルートのきっぷ売り場へ。列車の先頭車両から真っ先に降りたので、まだ誰も並んでいない窓口で「立山黒部アルペンきっぷ」の復路券を見せて、アルペンルートの「乗車整理票」を受け取る。

20240905-alpen-tateyama-01.jpg
アルペンルート立山駅 (駅前ロータリーより撮影)。窓口の行列は右側に伸びている

20240904-jr-alpenkippu-03.jpg
立山駅で受領したアルペンルートの「乗車整理票」

このきっぷは磁気券ではなく、駅員がハンディスキャナーで読み取るQRコード券だ。ケーブルカーの乗車時刻が印字されている。

なぜ、ケーブルカーの乗車時間が指定なのか。ここが輸送能力のボトルネックで、週末・連休などに積み残しが発生するからだ。アルペンルートの運行会社が平成31年に富山県に提出した改善計画書には、次のような記述がある。

20240905-alpen-konzatu-pdf.jpg

なんと、休日には行列は最短で60分、最大で240分と書かれている。ゴールデンウイークには5時間待ち...。そんなに並んでまで見る価値あるのかねぇ。

運営会社側は「増発努力します」と回答しているが、国立公園の自然を守るためには客数を制限するのが正解で、これ以上増発してどうすんだと言いたい。日本は欧米先進国に比べ、国立公園の山岳地に観光客を入れすぎている。

まだ誰も並んでいない立山ケーブルカーの改札口に並ぶ。モニターには「臨時 8:30発」と表示されているが、これは団体ツアー客のための専用列車の時刻だ。

20240905-alpen-tateyama-02.jpg
立山ケーブルカーの改札口

■ 立山ケーブルカー 立山駅(標高475m) 08:40発 → 美女平駅(標高977m) 08:47着

標高差 約500mを一気に登っても、まだ標高3,000mある立山の1/3まで到達したに過ぎない。そして、標高差で言えば大阪近辺で同等かそれ以上の路線がある。

国内のケーブルカー 標高差ランキング(Wikipediaより)
路線延長標高差
叡山ケーブル1,458m561m
六甲ケーブル1,764m493m
立山ケーブルカー1,366m487m

20240905-tateyamacablecar.jpg
中間地点ですれ違う大きな貨車を連結したケーブルカーの車両

20240905-tateyamacablecar-tyujyouseturi.jpg
ケーブルカーの車窓左側に、「材木石」と呼ばれる火成岩の柱状節理

美女平バス停の改札口には、1本前の臨時ケーブルカーの乗客が行列を作っている。高原バスは、積み残しが無いよう次々とバスが増発されるので、待っていればすぐに乗車できる。

20240905-alpen-bijyodaira.jpg
美女平バス停の改札口

■ 立山高原バス 美女平(標高977m)08:55発 → 室堂(標高2,450m)09:37着

バスはほぼ満席で美女平バス停を出発。私の隣の窓際に座っているのは、地元の富山から来た登山者の女性。今日の天候を見て登山にやってきたそうだ。

富山市街地の近くにあり登りやすい「近隣の山」は、熊が出るので気軽に行ける場所じゃなくなったので、登山と言えば立山など著名な山になるらしい。(交通費、高そう...)

そうはいっても、近隣地域の人は「天候を見てから出発」ができるので、羨ましい限りだ。

大阪の近隣の山に熊は出ないのか聞かれたが、六甲山や生駒山で熊が出た話は聞いたことがないと答えると、「いいねぇ」と言われてしまった。逆の立場で考えれば、費用的にも気合を入れていかないといけない「近隣の北アルプス」より、通勤電車で200円くらいで行ける六甲山地や生駒山地のほうが頻繁に登れて羨ましいという価値判断もあるのかもしれない。

20240905-alpen-kogenbus-bunazaka.jpg
高原バスから見た「ブナ坂」

かつての登山記録などを読むと、「ブナ坂」「ブナ平」という地名が出てくる。立山駅のある芦峅寺・千寿ヶ原の山小屋が登山口だったというような記述もあり、かなり長距離を歩いて立山に登っていたようだ。現在でも、立山ケーブルカーや高原バスの走る道路に沿って登山道・トレッキングコースが室堂まで整備されているので、徒歩で行けないことはないのだろう。 ヤマレコのルート検索でコースタイムを出してみると、上りで9時間20分だそうだ。

ケーブルカーと高原バスで1時間で行けてしまうのだから、便利になったものだ。

ブナ坂を登りきり、ブナ平に入ったあたりの道路沿いに杉の巨木がある。仙洞スギと呼ばれる樹齢300年・幹周り約9.4mの杉の巨木。高原バスは徐行して写真撮影の時間を取ってくれる。

20240905-alpen-kogenbus-sendousugi.jpg
美女平から約3km地点。高原バスから見た「仙洞スギ」(ブナ平立山のスギ)


20240905-alpen-kogenbus-taki.jpg
美女平から約4.7km地点(標高1,280m)。高原バスから見た「称名滝(しょうみょうだき)」

日本一の落差で4段の合計落差350mの滝が、称名峡谷を挟んだ1.5kmほど向こうにかすかに見えている。もう少し秋が深まり湿度が下がれば、クリアに見えるのだろう。この滝見台でもバスは徐行してくれる。

標高が上がるにつれ、しだいに雲が多くなってくる。弥陀ヶ原の草原・低木は紅葉がまだ始まっておらず、青々と葉を茂らせている。

乗降客が無く途中の停留所を全て通過したため、高原バスは時刻表より10分早く室堂ターミナルに到着した。

20240905-alpen-murodou-bus.jpg
室堂に到着した立山高原バス

高原バスが少し早めに到着したため、予定より1本前のトロリーバスに乗り継ぐことができた。

20240905-alpen-murodou-trolley.jpg
室堂ターミナルで立山トンネル トロリーバスに乗り継ぐ

このトロリーバスの車両は今年末で廃棄され、来年からはEVバスに入れ替えられるそうだ。

■ 立山トンネル トロリーバス 室堂(標高2,450m) 09:45 → 大観峰(標高2,316m) 09:55

20240905-alpen-trolleybus.jpg
立山トンネル トロリーバスの車内

立山トンネルは雄山直下の深さ約610mを貫通していて、トンネル壁面に「標高2,391m」の標識が取り付けられている。ちょうどこの場所は、バスがすれ違う行き違い信号所にもなっている。

20240905-alpen-trolleybus-tateyama.jpg
立山(雄山)直下を通過する立山トンネル トロリーバス (帰路に撮影)

頂上直下を通過したすぐ先、トンネル照明が青い光になる。トンネルが断層面を通過する破砕帯で、この約50mの区間を掘削するのに1968年9月から翌年11月まで約13ヶ月間掛かった工事の難所だった場所だ。

20240905-alpen-trolleybus-hasai.jpg
青い照明で照らされた破砕帯の区間を通過する立山トンネル トロリーバス (帰路に撮影)

地質図にも、トンネルが断層を横切っているのがはっきりと書かれている。

20240905-tisituzu-tunnel.jpg
立山トンネル周辺の地質図

トンネルは大観峰バス停に達する前に大きくカーブし、3.7kmの出口に達する。

次に乗るのは立山連峰の東斜面を一気に500mほど下降する立山ロープウェイだ。トロリーバスを下車し、ロープウェイの改札口に向かう。並んでいる人は1人だけだった。

20240905-alpen-rope-daikanbou.jpg
立山ロープウェイの大観峰駅改札口

■ 立山ロープウェイ 大観峰駅(標高2,316m)10:10発 → 黒部平駅(標高1,828m)10:17着

午前中は逆光だが、それでも後立山連峰の山々が一望できる。

20240905-alpen-rope-daikanbouview.jpg
ロープウェイ 大観峰駅付近から東方向(進行方向)の眺め

手前の山脈の左から鳴沢岳・赤沢岳 ... 針ノ木岳。左の奥の山脈には爺ヶ岳。眼下に見えるのは、もちろん黒部ダムがせき止めている黒部湖だ。

20240905-alpen-rope-daikanbouview02.jpg
ロープウェイ 大観峰駅付近から北東方向(左斜め前方向)の眺め

視線を少し左に向ければ、鹿島槍ヶ岳が見える。

20240905-alpen-rope-suretigai.jpg
黒部平から上がってきたゴンドラと猛スピードですれ違う

黒部ダムに至る最後の乗り物、黒部ケーブルカーの駅改札は20人くらいの客が並んでいる。

20240905-alpen-kurobecable-taira.jpg
黒部ケーブルカー 黒部平駅の改札口

20240905-alpen-kurobecable-taira02.jpg
黒部ケーブルカー 黒部平駅

■ 黒部ケーブルカー 黒部平駅(標高1,828m)10:30発 → 黒部湖駅(標高1,455m)10:35着

20240905-alpen-kurobecable-kurobeko.jpg
黒部ケーブルカー 黒部湖駅に到着

黒部ダム

駅から長い水平トンネルを歩いて水密扉を抜けると、黒部ダム(黒部第4ダム)の天端に出る。

20240905-kurobedam-01.jpg
黒部ダム 堤体天端の西端付近

ダムはアーチダムだが、両端部分が上流方向に折れ曲がったウイングダム(重力ダム)となっている。上の写真で、通路の向こうで90度折れ曲がっているのが、アーチ部分からウイング部分への接続部。

20240905-kurobedam-heimenzu.jpg
黒部ダムの平面図 (ここから転載)

20240905-kurobedam-02.jpg
黒部ダム堤体のダム湖側。対岸は赤沢岳の岩塊で、ダム湖右岸側に取水設備

20240905-kurobedam-03.jpg
黒部ダム 天端のダム中心線標識

20240905-kurobedam-04.jpg
黒部ダム 中心線上の天端から下流を見下ろす。ハウエルバンガーバルブ2門から放流が行われている

20240905-kurobedam-danmenzu.jpg
黒部ダムの断面図 (ここから転載)

この図から天端道路EL=1454m、河床EL=1268mなので、堤高 = 1454 - 1268 = 186m であり、日本一の高さとなっている。天端道路から見下ろした減勢工床(水叩部)までの高さとほぼ同じなので、結構高度感を感じる。

20240905-kurobedam-05.jpg
黒部ダム天端から見た黒部川の下流方向

20240905-kurobedam-06.jpg
黒部ダムの天端から見た黒部湖(上流方向)

ダム湖のはるか向こうに見える山塊は、水晶岳〜赤牛岳あたり。黒部源流の山々だ。

20240905-kurobedam-07.jpg
黒部ダム 右岸側から見たアーチ部分の天端道路。背後の山は立山(雄山)

黒部ダムの堤頂長は492mだが、アーチ部分だけの堤頂長は(地理院地図で計測し)約350mほど。

20240905-kurobedam-08.jpg
黒部ダム 右岸側にある表面取水施設

この取水施設から黒部川第四発電所まで、導水路トンネルが約10.4km、高さ545mを流れ下る水圧鉄管が722m続いている。取水量 72m^3/secで、最大発電量 337 MW というのが発電所の定格。

水の位置エネルギーから発電効率を見てみると

位置エネルギー = 72000 kg/sec × 9.8 m/sec^2 × 545m = 384.552 × 10^6 kg m^2 / s^3 = 384.552 MJ/s (MW)
発電エネルギー = 337 MW
効率 = 337 / 385 = 87%

火力発電の効率が50%程度なので、水力すごいね。

20240905-kurobedam-dousuizu.jpg
黒部ダム・黒部川第四発電所 導水模式図 (ここから転載)

20240905-kurobegawa-hatudenzu.jpg
黒部川水系 発電導水略図 (ここから転載)

20240905-kurobedam-09.jpg
展望台から見た黒部ダムの背面(下流側)

放流用のハウエルバンガーバルブは5門あるが、この日は中段の2門から放流されていた。

20240905-kurobedam-11.jpg
黒部ダムの堤体に取り付けられた点検歩廊(キャットウォーク)に、維持管理社員2名が見える

フルハーネスの安全ベルトをしているが、サビが目立つ歩廊にロープを掛けたところで万全の安全性とは言えないだろう。まさに、体を張ったすごい職業だ。

20240905-kurobedam-10.jpg
黒部ダム堤体の右岸側にある観光施設 黒部ダムレストハウス

右側のトンネル入口は扇沢に向かうバスのりばの入口だが、今回の立山黒部アルペンルートの旅行はここで引き返して室堂(雷鳥沢)でテント泊。

アルペンルート : 黒部湖駅から室堂駅へ

20240905-alpen-kurobecable-kurobeko02.jpg
黒部湖駅への歩行者用 水平トンネル

アルペンルートのなかで、黒部湖駅の内装は年季が入った感じを受ける。立山駅から黒部ダムで折り返してここまで、改札口に行列ができていることはほとんどなかった。やはり、閑散期の平日に来るべきところだと思う。

20240905-alpen-kurobecable-kurobeko03.jpg
黒部ケーブルカー 黒部湖駅

■ 黒部ケーブルカー 黒部湖駅(標高1,455m)11:10発 → 黒部平駅(標高1,828m)11:15着

20240905-alpen-kurobecable.jpg
黒部ケーブルカー 中間地点でのすれ違い

路盤の右側に「400」と白くペイントされている。路線長が828mなので、ここが中間地点の「400m」だということだろう。

ツアー客専用の臨時便が11:20に出たのち、11:30発の定期便に乗車。定期便に乗る一般客は、ロープウェイ定員の半分以下だ。

■ 立山ロープウェイ 黒部平駅(標高1,828m)11:30発 → 大観峰駅(標高2,316m)11:37着

往路の天気はまだ青空が見えていたが、復路はほぼ曇り空となった。縦山の稜線は完全に雲に覆われているようだ。

20240905-alpen-rope-suretigai02.jpg
立山ロープウェイ 中間地点より大観峰駅方向の景色

トロリーバスの改札口には、珍しく短い行列ができていた。さらには、台湾から来たツアー客も団体専用改札に並んでいる。

トロリーバスは臨時便を運行して客をさばくのではなく、同時に出発する車両数を増やして対応するようだ。

20240905-alpen-trolleybus-daikanbou.jpg
立山トンネル トロリーバス 大観峰停留所の改札口

■ 立山トンネル トロリーバス 大観峰(標高2,316m)11:45 → 室堂(標高2,450m)11:55

20240905-alpen-trolleybus-murodou.jpg
立山トンネル トロリーバス 室堂停留所に到着

停留所のプラットホームには、4号車までの停車位置プレートが掲げられている。大阪車輌工業製の8000形車両は8両あるので、全車両を投入すれば4両を団子状態で運用できるはずだ。1両で72人運べるので、130人程度のロープウェイやケーブルカーよりも大人数を輸送できる。

室堂駅から雷鳥沢野営場へ。火山ガス濃度高まる

20240905-alpen-murodou-concourse.jpg
観光客で混み合う室堂ターミナル1階、きっぷ売り場と改札口がある

20240905-murodou-keijiban.jpg
室堂ターミナルの階段に設置された遭対協の掲示板

注目点は「熊注意」のところ。一の越あたりで、1ヶ月間に3回も目撃されている。

20240905-murodou-tateyama.jpg
室堂ターミナルの屋上出入口から望む立山

雨は降っていないが、地上付近まで雲が掛かっているところもあり、景色は良くない。その代わり、直射日光を浴びずに涼しく雷鳥沢まで歩くことができそうだ。

大きな石を埋め込んだコンクリート舗装の歩道を歩いていくと、ミクリガ池あたりまでは多くの観光客が行き来している。

20240905-mikurigaike.jpg
雷鳥沢までの歩道沿いから見たミクリガ池

ミクリガ池をすぎると観光客の数が減り、アップダウンも大きくなる。遠くから防災無線のような屋外スピーカーからの放送が聞こえてくる。

" 現在、エンマ台から雷鳥荘の間で 火山ガス濃度が上昇しています。 水に濡らしたタオルで口や鼻を覆い、速やかに通過してください " (女声の自動アナウンス)

みくりが池温泉の建物を過ぎて坂道を登っていくと、雷鳥沢に向かう歩道は地獄谷を一望できるエンマ台を通過する。この高台に火山ガス情報ステーションがあり、すぐ脇にある観測装置のパトライトが光って、スピーカーから大音響で警告文を放送している。

20240905-kazangas-enmadaistation.jpg
エンマ台の火山ガス情報ステーション

しばらくすると、ガス濃度が更に上がったらしく、今度は逼迫した雰囲気の男声版の警告文が流れた。

" 現在、エンマ台から雷鳥層の間で 火山ガス濃度が制限値を超えています。 この場で待機してください "

警告放送装置の脇にある立て看板によれば、火山ガス濃度が

・ 2ppm 〜 5ppm : 速やかに通過
・ 5ppm以上 : 通行止め

という基準があるようだ。

20240905-kazangas-enmadaistation02.jpg
火山ガス濃度の警告放送装置

海風(谷底から立山方向に風が吹き上がってくる)のときには、エンマ台と雷鳥荘の間の鞍部(コル)に地獄谷で発生したH2S(硫化水素)やSO2(亜硫酸ガス)が吹き上がってくるのだろう。

20240905-kazangas-raityousou.jpg
エンマ台から雷鳥荘方向。地獄谷からリンドウ池に続く谷を火山ガスが吹き上がってきて、雷鳥荘がほぼガスに包まれている

20240905-kazangas-enmadai-raityousou.jpg
エンマ台から見た、雷鳥荘に続く尾根に沿った歩道。左側がリンドウ池の谷、右側は血の池地獄の谷

リンドウ池の谷を吹き上がってきた火山ガスは、谷筋の最も低いところを通過して一の越方向に流れていく。ちょうど尾根に沿った歩道を火山ガスが通過していくので、濃度が上がればここが通行止めになる。

リンドウ池側の斜面に生えていたハイマツは、火山ガスで枯死して枯れ枝だけになっている。いっぽう、右側の血の池側の斜面や谷底の木や草は緑色で問題なさそうだ。谷底から吹き上がってきた火山ガスは空気より比重が大きいが、称名川を吹き上がってくる海風の大きな流れに沿って谷底に再び降りていくことはないのだろう。

つまり、歩道のある尾根を超えたガスが、雷鳥沢の谷底に向けて降りていくこともないはず... (希望的観測?)

20240905-murodou-tinoike.jpg
血の池地獄(火口)

火山ガスの量が増えて濃度警告が頻発するということは、火山活動が活発になっているということ。もしかしたら、弥陀ヶ原火山が再噴火する可能性もすこしはあるということだ。

Webで調べてみると、小規模な噴火が起こっても雷鳥沢野営場は噴石などが降り注ぐ予想となっている。

ハザードマップを参考にすれば、火口から遠ざかる方向、劔御前小舎または大走を登って真砂岳に向けて逃げるしかなさそうだ。

20240905-midagaharakakou-tukoutyui.jpg
現地看板『火山ガス濃度上昇のため通行注意

弥陀ヶ原の概要
過去1万年以内の活動により,火山灰層が7層になっていることから,少なくとも7回の噴火が起きており,噴火口は地獄谷周辺や血の池地獄周辺,称名火口や大谷火口群などであったとみられる。現在,地獄谷周辺では活発な噴気活動がみられ,地獄谷周辺地下にキャップロックやガス溜りの存在が示唆されているほか,膨張性の地殻変動も観測されている。そのため,他の噴気活動がない地域と比べ噴火が発生する可能性は,最も高いと考えられる。

弥陀ヶ原火山噴火緊急減災対策砂防の基本理念(https://www.hrr.mlit.go.jp/tateyama/jigyo/sabo/plan02_1.pdf)より
弥陀ヶ原 過去1万年以内の噴火活動(弥陀ヶ原火山の完新世噴火履歴解明報告書 石崎,2017)
1500年前以降大安地獄
2500年前地獄谷北域
4800年前地獄谷北域、血の池地獄
7800年前血の池地獄〜りんどう池
9300年前称名火口
弥陀ヶ原火山避難計画 令和6年(https://www.pref.toyama.jp/documents/39410/)よりsiryou3-2.pdf

20240905-midagaharakakou-map.jpg
弥陀ヶ原火山と、室堂から雷鳥沢までの登山道
(「立山火山をみる」中野俊 2000年秋 富山と自然に掲載されている火山地図に、地理院地図を合成した)


20240905-midagaharakakou-hazardmap.jpg
弥陀ヶ原火山 ハザードマップ

雷鳥荘をすぎると、称名川の谷底に雷鳥沢野営場が見えてくる。平日なので、テントの数はそれほど多くなさそうだ。

20240905-raityousou-raityouzawa.jpg
雷鳥荘付近から、約100m下にある雷鳥沢を見下ろす

延々と続くかと思える階段を、谷底まで標高差100m降りていく。

雷鳥沢野営場に到着

20240905-raityouzawa-jimusyo.jpg
環境省 雷鳥沢野営管理所

20240905-raityouzawa-price.jpg
雷鳥沢野営場の料金 1,000円/1人・1日

かつて、北アルプスのテント場の多くは500円/日だった。コロナ禍と自民党の強制インフレ(価格転嫁政策)で、いつの間にか平均料金が2,000円/日になっている。雷鳥沢の1,000円が安く感じるのは、世の中のぼったくり価格転嫁で感覚がマヒしてしまっているからだろう。

20240905-raityouzawa-tent.jpg
雷鳥沢野営場にテント設営完了

国営なのでコロナ前から大幅な値上がりがしておらず、テント泊は1泊1,000円とリーズナブルだ。その上、井戸水が豊富でトイレの小便器や洗面台の水栓が「全開・かけ流し」方式で、水使い放題なのもありがたい。