11 September 2022

双六岳テント泊。途中で引き返す: その1 新穂高~林道終点

双六岳テント泊に向かったが、悪天候になりそうなので鏡平で引き返した記録。

もくじ

新穂高へ

■ 濃飛バス 大阪東梅田 21:35発 → 新穂高 05:30着 (運賃 9500円)

去年の9月に続き、今回も大阪と高山を結ぶ夜行路線バスに乗車する。運賃が値上がりしていて、金・土・日出発の便が8,000円から9,500円になっている。なんと18%もの爆上げである。

アルピコ交通のさわやか信州号(上高地/白馬行き)の運賃を意識してるのか... どうなのか。

ライバルのさわやか信州号とは、京都駅出発直後の油小路通りで並走していた。タイミングが合えば(?)、黒丸SAでも隣に停車するかも。

発車オーライネットの予約画面では、上高地行は満席、白馬行は半分程度、そして私が乗車した新穂高行は定員27名の7割程度の乗車率。それでも、去年に乗ったときに比べたら大幅な乗車率のアップだ。しかし、悪天候でキャンセル続出の登山路線なので、晴れた日だけ7割乗車では採算は厳しいかもしれない。

少々の値上げは受け入れるので、頑張って路線を維持して欲しいものだ。

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名神高速の黒丸SAに停車中の新穂高行きバス(23:35〜23:50 停車)

濃飛バスの車両一覧によれば、同社で2両しか保有してない 三菱ふそう エアロエース(夜行用 3列シート)。カタログ価格はなんと4300万円ほどだそうだ。

黒丸SAで購入したサラダチキンバーとペットボトル水(241円)、新福島駅前のローソンで購入したおにぎり2個(240円)が明日の朝食となる。

ウトウト寝た程度で完全に睡眠不足状態のまま、朝4時ごろJR高山駅前に到着。5人ほどが下車していく。こんな早朝に、観光客?

さらに1時間走り5時に平湯バスターミナル。ここでも数名が下車。上高地行きのバスに乗り継いでいくようだ。平湯から上高地へのバスは1,180円なので、直通のさわやか信州号より420円安い価格設定だが、現地到着は7:51と登山にはふさわしくないほど遅くなる。(平湯の始発が6:55と遅すぎるため)

5時30分、定刻より20分早く新穂高ロープウェイ前に到着。ここまで乗ってきたのは10人以下の模様。下車した客の殆どは、右俣林道(槍ヶ岳)方向へ向かうか、ロープウェイの始発便を待つようで、左俣林道方向(笠ヶ岳・双六岳)へ向かう人はほぼ居ないようだ。

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新穂高ロープウェイの駅前に到着(駅の横には高山行の路線バスが停車している)

ロープウェイ駅前には、6時11分発の高山駅行の始発バスがすでに停車している。このバスの回送便が高山駅横の車庫から出ているのだから、ノンストップバスとして客扱いしてくれたら、前泊で高山市街地宿泊という行程も組めるのだが...

GPSログ

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区間時刻所要時間
新穂高 登山指導センター 〜 左俣林道終点05:48 〜 07:081時間20分
左俣林道終点 〜 秩父沢 出合07:08 〜 07:4941分
秩父沢 出合 〜 シシウドヶ原 ベンチ08:04 〜 09:161時間12分
シシウドヶ原 ベンチ 〜 鏡平山荘09:21 〜 10:0645分
鏡平山荘 〜 シシウドヶ原 ベンチ10:34 〜 11:0026分
シシウドヶ原ベンチ 〜 秩父沢 出合11:00 〜 11:3838分
秩父沢 出合 〜 左俣林道終点11:47 〜 12:1932分
左俣林道終点 〜 新穂高 バス停12:19 〜 13:291時間10分

植生図

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今回の経路は、新穂高から林道終点付近まではブナ林を歩き、林道終点より秩父沢を経てイタドリヶ原までは低木ダケカンバの林を歩く。

その後、イタドリヶ原からシシウドヶ原付近まで「オオヨモギ ー オオイタドリ群団」となり、クマの踊り場付近はオオシラビソの林があるというものだ。

新穂高 〜 左俣林道終点(小池新道 登山口)

新穂高ロープウェイのバス停から5分弱下って、新穂高登山指導センターに向かう。ここで登山届を提出し、朝のトイレ(大)を済ませる。

無料の公衆トイレだが、ウォシュレット付きの綺麗なトイレだ。

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新穂高登山指導センター(標高約1080m)と朝日が当たり始めた笠ヶ岳稜線

ここでは、駐車場に車を停めてやってきた登山者が目立っている。というより、バスを降りて下って来たのは私を含めて2〜3人ほどのはずだ。

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北陸電力 中崎発電所と国交省神通川水系砂防事務所の監視カメラ

登山指導センターの前を流れる蒲田川を挟んだ対岸には、北陸電力の中崎発電所がある。これから登る左俣林道の3.3km地点には、この発電所の取水施設がある。

ちょうどこの写真に写り込んでいる、単管足場やぐらに取り付けられたWebカメラ。国交省神通川水系砂防事務所の監視カメラで、Web公開されている「新穂高(右俣・左俣合流点)」を撮影しているものだ。

Webカメラとほぼ同じアングルで撮影したのが、次の写真。恵橋は、渓流保全工に伴って2015年にかけ替えられたものだそうだ。

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新穂高の蒲田川に架かる恵橋と、穴毛谷、笠ヶ岳・抜度岳稜線

登山指導センター・恵橋から600mほど歩くと、左俣林道ゲート。

去年、林道が落石で通行止めになったので、森林管理署の「落石注意」の大きな看板が貼り出されている。山小屋の黄色い看板は、熊出没注意と予約なし宿泊の拒否お知らせだ。

小屋はあるが緊急時でも宿泊拒否なので、遭難する可能性が少しでもあればさっさと引き返すか、切腹自死せよということなのだろうか。まあ、今年もコロナクラスターで臨時休館する小屋が槍穂高や裏銀座で続出したので仕方ないだろう。

そもそも、雑魚寝の小屋で形だけの仕切り板てた程度では、感染対策とか無理でしょ... どう考えても。

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左俣林道ゲート(標高約1130m)

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左俣林道ゲートの注意看板

ゲートを過ぎて九十九折の坂道を10分弱登ると、かつて砂防堰堤工事をしていたときの河原に降りる分岐点が残っていて、そこから穴毛谷の全景を眺められる。最上部は笠ヶ岳へ続く登山道「笠新道」が通過する杓子平で、2000年3月に発生し国内最大級と言われた左俣谷雪崩が発生した現場だ。

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穴毛谷と笠ヶ岳・抜度岳稜線

左俣谷の本流にある巨大な滝のようなものは、左俣谷第1号上流堰堤(国交省)。これは砂防事務所のライブカメラでも中継が見れる。そして、写真の中央付近、穴毛谷に段々と作られているコンクリート構造物は、穴毛谷第○○号コンクリート堰堤工(林野庁)。似たような施設だが、役所組織の縦割りで別省庁のものが並んでいる形だ。

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近くを通ると冷たい風が吹き出してくる「お助け風穴」

"橋が傾いているため 通行された場合の事故について 一切の責任を負いかねます"という森林管理署の注意看板がある中崎橋を渡る。橋が傾いているのかどうかは見ただけではわからないが、欄干が下流に向かって倒れているのは明らかだ。雪崩が通過したときになぎ倒されたのだろう。

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左俣谷に架かる中崎橋を渡る(標高約1330m)

橋を渡るとすぐに、北陸電力の左俣谷取水所。新穂高にある発電所に水を送るための分水堰だ。

ここまで、新穂高登山指導センター・恵橋から約45分、標高差300mほど登ってきた。

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中崎発電所の左俣谷取水施設 (右側から流れ込んでいるのは、右俣谷からの導水路出口)

ここで先行する登山者2名を追い抜く。

しばらく行くと、1997年に大規模な斜面崩壊が起こった上岩小屋沢の末端部を通過する。20年ほど前に行われた営林署の治山工事で積み上げられ整えられた自然石は、表面を雑草が覆い尽くして工事の痕跡が消え去ろうとしている。

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左俣林道が上岩小屋沢の崩壊堆積地を横切る地点

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左俣林道に隣接する空き地は、山小屋へ輸送する荷物を積み下ろしするヘリポート

新穂高登山指導センターから50分、笠新道が分岐する地点に到達。湧き水があり、ペットボトルに給水する。次の給水できる地点は秩父沢だ。

この日、笠新道入口で汲んだ水は前回(去年)と比べて少し苦かった気がする。

先行していた2人の登山者が、笠新道の方へ登っていく。中崎の取水施設前で追い抜いた2名は、私と同じ方向へ向かうようだ。

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左俣林道から笠新道が分岐する地点。湧き水で給水できる

この付近のクマは「クマ鈴」では逃げないのか、林道のそこかしこに「クマ除けの叩いて鳴らす空き缶」が設置されている。

どの空き缶もボコボコに叩かれたのか、凹みまくっている。その力を、クマに直接ぶつければ退治できそうなものだが...

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クマ除けの叩いて鳴らす空き缶

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サラシナショウマ (わさび平小屋付近)

わさび平小屋の前には、数人の登山者が休憩している。前泊して、これから登り始めるのだろうか。

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わさび平小屋(標高約1400m)

この付近はブナの群落が林道沿いに広がっていて、「わさび平 ブナの森」の看板がある。(植生図では、中崎橋から林道終点までは、ほぼ「チシマザサ-ブナ群団」となっている)

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わさび平 ブナの森

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左俣林道を沢の水が横切っている

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ミズキ (左俣林道 標高1500m付近)

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左俣林道の終点と、橋の左に小池新道の入口(標高約1470m)

新穂高登山指導センターから1時間20分、左俣林道の終点で小池新道の入口地点に到着。距離6.0km、標高差400mほど「だらだらと坂道」を登ってきた。