15 May 2018

葵祭行列を建礼門より手前で観る:その1 勅使行列

葵祭行列は、京都御苑の建礼門前からスタートし、下鴨神社、上賀茂神社と巡行する。行列がスタートするより手前、御所西側の築地塀沿いは出演者が整列して待機する場所になっている。ここは、近代的建築物や観客を写り込ませずに撮影できる数少ない撮影ポイントの一つだ。

そして、その撮影ポイントの絶好の位置に、『清水谷家のむくのき』があって日陰になっている。立て看板によれば “大きなムクノキは、このあたりが清水谷家という公家の屋敷であったことから名付けられた。樹齢は約300年”とのこと。

300年前といえば江戸時代。現在の御所が形作られたのが14世紀の南北朝時代なので、江戸時代中期にここは内裏の角ではなく公家の屋敷だったのだろうか。

とはいえ、30℃以上の真夏日の予報になっているので、この日陰はありがたい。前回、2015年に見物した時は堺町御門付近の影のないところだった。今日は影のない所はキツそうだ…。

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京都御苑の地図と葵祭行列の巡行経路

(紫の点線が公式の行列経路。赤矢印の先が『清水谷家のむくのき』)

もくじ

葵祭行列を建礼門より手前で観る:その1 勅使行列
葵祭行列を建礼門より手前で観る:その2 斎王代行列

(前回)
葵祭路頭の儀 勅使行列 (2015年)
葵祭路頭の儀 斎王代列 (2015年)

大阪から京都御苑の撮影ポイント

■ 京阪電車 特急 淀屋橋 07:59発 → 出町柳 08:57着 (470円)

淀屋橋駅からの特急は、始発からほぼ満員。中之島から電車に乗ると、天満橋でこの特急に乗り換えることになるが、確実に座れそうにない。 自宅から淀屋橋まで堂島川沿いを歩く。

電車はほぼ遅れることなく、終点の京都出町柳駅に到着。 駅を出て、高野川・鴨川を渡る。

葵祭行列が昼前に差し掛かる下鴨神社が2つの橋の間にあるが、この時間に橋付近で場所取りをする人は全く居ない。 なお、下鴨神社内は3時間前に行かないと最前列を確保できないという噂も多い。

今出川通を、同志社大学方向へ歩く。 道をゆく人は、ほぼ大学生のみという状況。

御苑の北東にある石薬師御門から入り、御所北側の築地塀沿いを歩く。この辺りまでは歩いている人もほとんど居らず、ほんとうにきょう葵祭があるのか心配になるくらいの客数の少なさ。

御所の北東角に何台かの観光バスが停車している。 御苑西側の築地塀沿いを南へ。この辺りまで来ると、報道カメラマンが清所門の脇で手持ち無沙汰で待っているのが見える。

9時10分、今日の撮影ポイント『清水谷家の椋』の木陰に到着。まだほとんど見物客が来ていないため、木陰の良い場所を確保。

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『清水谷家の椋』から御所西側の築地塀沿いを眺める

周囲は半分以上が外国人。

牛車

9時30分、祭りが始まる1時間前に勅使行列の牛車がやってくる。 牛ではなく、人間が引っ張っている。

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勅使行列の牛車(牛なし)

勅使が乗るための牛車だが、葵祭では勅使は騎馬でやってくるので、牛車は行列の最後尾を誰も乗らずに引かれる役回りだ。

牛車は『清水谷家のむくのき』を左折して、建礼門の手前で停車して休憩している。 見物人を区切るロープが張られていても、ガイジンを中心とする見物客は牛車を取り囲んで撮影している。最早、日本の社会秩序は無いも同然だ。

牛車が通りすぎてから20分ほど経った9時50分、今度は牛が2頭やってきた

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葵祭 勅使行列の牛

牛車を牽く牛は、2頭が交代となるのか、あるいは替え牛はずっと索かずに済むのか…。 斎王代行列の牛車を牽く牛2頭とあわせ4頭の牛は、“滋賀県大津市の畜産業者から引き取り、牛車用として岸本乗馬センターで飼育されている”そうだ。 (『京の名脇役 祭り行列の牛馬』より)

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日陰で休んでいる勅使行列の牛

しかし、近くで見ると大きいですね

乗尻 : 六衛府の衛士

続いて勅使行列の先頭を飾る乗尻がやってくる。近衛兵となっている六衛府りくえふの衛士である。左右近衛府・左右衛門府・左右兵衛府で六衛府。緑と橙の衣は所属官庁をあらわしているのだと思われるが、どこなのだろう…

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勅使行列の乗尻

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勅使行列の乗尻

検非違使尉と検非違使志

築地塀沿いに検非違使や山城使の従者たちがやって来ました。

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検非違使の従者たち

築地塀の日陰に入ろうと、壁ぎりぎりまでセットバックして待機します。

都の治安を守る警察機関も、現代の暑さには弱いようです…

引き続いて騎馬の役人たちがやってきます。

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検非違使志と従者

検非違使志けびいしのさかん四等官の主典(さかん)で、臣下六位。律令の位袍では深緑色のはずだが、八位の深縹色の衣を着ています。

馬使、従者、弓矢を持つ調度掛が従っています。が、現代の祭りでは従者(A4用紙を持っている)が出番の交通整理をしていました。

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検非違使尉

検非違使尉けびいしのじょうは四等官の判官(じょう)で、臣下五位。律令の位袍規定通り浅緋色の衣を着ている。

山城使 : 山城国司の次官

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山城使

平安京がある山城国の国司代理として使わされた次官。深緋色の衣を着ているので、位袍規定では臣下四位となる。

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山城使の従者の雑色

巻物を納めたと思われる箱を運んでいる。

内蔵寮史生と御幣櫃

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御幣櫃を運ぶ白丁

お上(天皇)から神への供え物が入れられている。

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内蔵寮史生

内蔵寮史生くらりょうのししょう御幣物ごへいもつ(お上から神社への供え物)を扱う内蔵寮史生

馬寮使

馬寮使めりょうつかいがやってくる。左馬寮さめりょうの使者で、臣下六位の役人。朝廷が保有する馬の飼育・調教を担うが、Wikipediaによれば“検非違使を補助して都の治安維持の業務にあたり、帯剣を許されていた”そうだ。

葵祭に登場する馬寮使も、行列を警護する役割があるのか刀と矢を着装している。

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馬寮使

舞人

このあとには、舞人まいびどがやってくる。舞人は臣下五位の役人のうち、歌舞の堪能者が任命されたそうだ。

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舞人

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御幣物を運ぶ白丁と舞人

近衛使代 : 勅使の代行者

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勅使

臣下四位の近衛中将が天皇の名代である勅使代理(近衛使代)を務めている。

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勅使の牽馬

舎人が牽く馬は、勅使の帰路に使われることになっている。

風流傘

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風流傘

陪従

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陪従

陪従べいじゅうとは、下鴨神社・上賀茂神社の社頭で歌をうたい楽器を奏する役。

内蔵使

内蔵使くらづかいは、内蔵寮くらのりょうの臣下五位の役人で、勅使が神前で奏上する御祭文を奉持している。職名は内蔵助くらのすけ

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内蔵使

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内蔵使の従者

従者が運んでいる黒い漆箱が、御祭文を入れている箱なのだろうか…

花傘

勅使行列の最後尾は花傘。

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花傘