21 June 2020

見学入場停止中の天ヶ瀬ダムに行ってきた

淀川上流、琵琶湖から出た水を調整する「天ヶ瀬ダム」を観に行ってきた。 新型コロナで、まさかの公開停止中ということで、フェンス越しに放流中のダムの勇姿を拝んだだけだった。

宇治へ

■ 京阪本線 淀屋橋 08:00発 → 中書島 08:37着
■ 京阪宇治線 中書島 08:40発 → 宇治 08:55着 (運賃 420円)

政府の自粛要請が段階的に解除され、週末に出かける人が多くなっている。 特急の出町柳行も、5月末に比べれば2割から3割は乗客数が増えている。 それでも、クロスシート席の隣は「空ける」のが、コロナ時代の常識のようだ。

20200621-tennozan.jpg
大阪と京都の県境、三川合流地点付近から天王山を望む

20200621-keihan-tyusyojima.jpg
京阪宇治線 中書島駅

中書島駅で、宇治線の4両編成の列車に乗車。休日なのに、全ての席が埋まる程の混雑ぶり。 殆どの乗客が、宇治の1駅手前の三室戸駅で下車していった。 駅を出て、あじさい寺と反対側の踏切をわたっているので、通勤客… ?

20200621-keihan-uji.jpg
京阪宇治駅

宇治に来るのは10年ぶり。 前回は2010年3月『 宇治 : 平等院

今日はここから、平等院のある宇治川左岸の観光地を避けて、右岸側を行く。

宇治駅から天ヶ瀬ダム

20200621-tracklog.jpg
20200621-tracklog-height.svg.png

GPXファイルをダウンロードする

宇治駅のすぐ前には宇治橋が架かっていて、対岸(宇治川の左岸)は平等院などがある観光地。

20200621-ujihashi.jpg
宇治橋

宇治橋を渡らず、宇治川の右岸の道を直進する。

20200621-ugandouro-01.jpg
宇治駅前付近、宇治川の右岸道路

道路沿いには神社・寺院のほか、観光客向けの割烹や料亭旅館などがいくつかある。その中に、宇治茶しか売っていない自販機を発見

20200621-ugandouro-ujicha.jpg
宇治茶しか売っていない自動販売機

ウーロン茶も、一般的な日本茶も無い。もちろん、清涼飲料水など、宇治の人たちは飲まないのだろう。 なんという、宇治茶への愛。

20200621-ujijyujyou.jpg
朝霧橋右岸の宇治十帖モニュメント

宇治十帖とは、『源氏物語』最末尾の十帖(第45帖 橋姫 から 第54帖 夢浮橋)の物語舞台は宇治であるため、その10巻を指すことば。

朝霧橋の袂にあるこのモニュメントは、浮舟匂宮が小舟で宇治川に漕ぎ出すシーンを示しているそうだ。

ここには観光客向けの標識もあり、天ヶ瀬ダムまで36分という中途半端な表記。 1分→80m という不動産などでの徒歩距離の計算手法を用いると、ダムまで 36 × 80 = 2880 m

20200621-ugandouro-02.jpg
朝霧橋の袂にある標識(天ヶ瀬ダムまで36分)

20200621-ujijinjya.jpg
宇治神社の大鳥居

20200621-asagirihasi.jpg
朝霧橋と万葉句碑

宇治川は
淀瀬なからし
網代人
舟呼ばふ声を
ちこち聞こゆ

右岸道をさらに先へ行くと、関西電力 宇治発電所の放流路をまたぐ朱塗り風の橋 「観流橋」 がある。

20200621-kanryubasi.jpg
観流橋

放流路を猛烈な勢いで下ってきた水が、白波を立てて宇治川本流に合流している。

20200621-kouseiji.jpg
興聖寺の琴坂の出口にある門

琴坂は紅葉の名所だそうだ。 このあたりで、宇治川の対岸には槇ノ尾山(標高106m)が見える。

20200621-makinooyama.jpg
宇治川と槇ノ尾山

興聖寺の山門前付近で人家は途切れ、そこから先は木が生い茂って太陽光を遮ってくれる涼しい道となる。

20200621-ugandouro-03.jpg
宇治川の右岸道路

天ヶ瀬吊橋の手前には、道が少し広がった空き地があり、車を停めてバーベキューをする集団が居る。

ここの天ヶ瀬吊橋をわたり、宇治川左岸に渡る

20200621-amagasehasi.jpg
天ヶ瀬吊橋

20200621-sagandouro-01.jpg
宇治川の左岸道路(ダム管理道)

左岸には、川沿いのダム管理道と、もう少し崖の上を並行して走っている府道3号線がある。

20200621-sagandouro-02.jpg
天ヶ瀬ダム再開発事業のトンネル発破の注意看板

今年度末の2022年2月までが再開発の工事期間のようだ。 仕上げ段階ではなく、まだトンネル掘ってるんでしょうか…

しばらく歩くと、2016年に架け替えられた新・白虹橋に到達。 橋の上には、ロードバイクで登ってきたサイクリストが数人と、朝のウォーキングでやって来たお年寄りが数人、ダムの放流を眺めている

20200621-hakkobasi.jpg
天ヶ瀬ダム 白虹橋

天ヶ瀬ダム

白虹橋からは、轟音を立てて水を吹き出しているダムの堤体が見えている。

20200621-amagasedam-01.jpg
白虹橋から見た天ヶ瀬ダム

20200621-amagasedam-02.jpg
白虹橋から見た天ヶ瀬ダムの放流の様子

今日の放流量は260 m^3/secほどなので、900m^3/secの放流能力を持つダムとしては、チョロチョロ状態に近い。それでも、結構な水量に見える。

20200621-amagasedam-houryuryou.jpg
天ヶ瀬ダムの放流量 トレンドグラフ

この放流量を1.5倍 (1500 m^3/sec)に増やすため、放流路の新設工事 「天ヶ瀬ダム再開発事業」が行われている。

そのためなのか、白虹橋からダム本体の左岸側にある管理事務所までの道は、新しい放流路を造る工事のため通れないようだ。

ここからダム管理支所への道は、上り坂と、下り坂の2種類がある。 上り坂のほうには、「土砂崩れ通行止め」 と書かれている。

20200621-amagasedam-tukoudome.jpg
白虹橋からダム管理支所の間の道路は土砂崩れのため通行止め

道の入口は可動フェンスで閉じられていて、道の先には現場事務所が建っているのが見える。

下り坂の方は、いかにも工事現場の鉄板を敷いた仮設通路だ。

すこし仮設通路を下ってみると

20200621-amagasedam-03.jpg
工事仮設道路と新放水路出口の掘削現場

20200621-amagasedam-houryutunnel.jpg
築造中の新放流路の減勢池部

工事説明図によれば、減勢池部の完成寸法は、幅23m、高さ26mとのこと。

近畿地方整備局の資料によると、公示の概要は次のようなものらしい

20200621-houryusetubizu.jpg
天ヶ瀬ダム 再開発事業の概要図

工事用仮設通路を進んでいくと、関西電力 天ヶ瀬発電所の入口ゲートがあり、それ異常進むことが出来ない。残念ながら、この先どうあがいても天ヶ瀬ダムの管理支所の建物のところには辿り着けそうにない。

左岸側の道路を下流方向に戻る。

天ヶ瀬吊橋の前を通り過ぎ、更に下流方向へ。800mほど行くと、もみじ谷方向への道路分岐の横にトイレがあり、府道に登る階段がある。 川沿いのダム管理道と府道の合流点まで戻らなくても、この階段で少しだけ近道となる。

20200621-sagandouro-kaidan.jpg
宇治川左岸のダム管理道と府道を繋ぐ階段

ここから先、府道3号線を1.2kmほど進むとダム管理支所前だ。

20200621-sagandouro-03.jpg
宇治川左岸の府道3号線

何箇所かで、法面崩壊を防ぐための補強工事が行われている。 落石のある地方なら、当たり前の工事だが、「国土強靭化」 の予算消化のようなことになってしまっている。

20200621-sagandouro-kyoujinka.jpg
府道3号線の国土強靭化の法面保護工事

20200621-sagandouro-rockbolt.jpg
法面補強で打ち込んだばかりに見えるロックボルト

哺乳瓶の乳首ではありません。ロックボルトの頭を保護する乳首型のカバーです

20200621-sagandouro-ujigawa.jpg
府道3号線から見下ろす宇治川と天ヶ瀬吊橋

府道に入ってからは、徒歩の客は誰も見かけない。 たくさんの車と、時折、ロードバイクに乗ったサイクリストが通り過ぎていくくらいだ

20200621-amagasedam-kanritou.jpg
天ヶ瀬ダム管理支所

入口は閉まっている。 警備員詰め所の人に聞けば 「新型コロナのため、見学は出来ない」 とのことだ。

20200621-amagasedam-close.jpg
天ヶ瀬ダムの新型コロナによる見学停止のお知らせが貼られた看板

当面、6月末まで見学の停止と書かれている。

ダムの堤頂通路には入れないし、もちろん対岸の天ヶ瀬森林公園に行くことも出来ない。 ダムをよく見れる場所が他に無いか警備員に聞いたところ、白虹橋に降りてゆく管理道の途中、発電所の上辺りまでなら行くことが出来るようだ。 それ以上向こうは、例の土砂崩れでフェンスが張られているので行き止まりらしい。

お言葉に甘えて、発電所の上辺りまで下ってみる。 たしかに、放流路の工事現場からよりも、少しだけダムの放流口に近づいている。

20200621-amagasedam-04.jpg
天ヶ瀬発電所の直近から見た天ヶ瀬ダム

20200621-amagasedam-05.jpg
天ヶ瀬発電所の直近から見た天ヶ瀬ダム

この位置からなら、260 m^3/secの水を吹き出している3基のコンジットゲート(電動ローラーゲート 3.42m×4.56m)と、非常用洪水吐の4基のクレストゲート(油圧ラジアルゲート 10m×4.357m)が肉眼でもはっきりと見える。

再びダム管理支所までまで登り返し、府道3号線をダム湖の方へ歩く。

20200621-amagasedam-06.jpg
天ヶ瀬ダム本体、堤頂通路

この位置からは、放流水やコンジットゲートは見えない。

20200621-amagasedam-07.jpg
天ヶ瀬ダム本体、堤頂通路

放流水路の新設工事が終わった頃に、また見に来たいものだ。 次は、あの堤頂通路を歩いて、コンジットゲートを見下ろしてみたい

帰りも、往路を戻る形で、宇治川右岸の木々に覆われた道を宇治駅まで。

■ 京阪宇治線 宇治 10:58発 → 中書島 11:13着
■ 京阪本線 中書島 11:15発 → 淀屋橋 11:53着 (運賃 420円)