今週末に衆議院議員の選挙がある。与党(自民・公明)が過半数割れして大連立となるかもしれないとも言われている。(総選挙は株価上昇のアノマリーが、今回は通用しないかも)
それよりも気持ち悪いのは、政治家、経済界・経済評論家、マスコミが揃って
インフレと(それを上回る)賃上げの組み合わせしか、日本経済を成長させ、未来を開くことが出来ない
との論調であることだ。
果たしてそうであろうか...
これは単にハイパーインフレを起こして、破綻国家をガラガラポンしようとしているのではないかとの疑念が湧いてきた。
自民・公明政権、経済界、マスコミは意図的にインフレを起こそうとしている
「値上げ」という言葉を封印し、「価格転嫁」という新たな言葉に言い換えて、まるで値上げが美しいことのように刷り込もうとしている。
その典型例が、今年のコメの価格上昇だ。
去年の今頃、一般的なコメの価格は1,500円/5kgほどであった。
コメが小売店の店頭から消滅し、仲卸業者が外食産業に売るためのコメを流通段階で次々と買い占め、挙句の果には収穫直後の農家から高額買取し、価格吊り上げ行為をしていたと週刊誌等で報じられている。
自民・公明政権、経済界、マスコミは「コメの在庫は十分ある」「収穫期を迎えれば価格は下がる」と言い続けるだけで、なんのアクションも起こさなかった。
仲卸業者による買い占め・売り惜しみによる価格釣り上げ行為に対抗するのは、実は非常にかんたんなのだ。年間消費量800万トンに対して、100万トン保有している政府備蓄米を「緊急放出する準備を農水省に対して命じた」と首相(あるいは関係筋)が匂わせればよいのだ。実際に放出する必要はない。買い占め・吊り上げ・売り惜しみしている仲卸業者は、市況が崩れることを恐れて手持ちの米を売り払うはずだ(値段も下がる)。それでもダメなら、備蓄米を若干放出しつつ「備蓄米の放出を始めた。今後は海外から100円/kgの安価な米を買い付け、大量放出するための準備を行う」と政府高官が発言すれば、米価格は暴落する。値段を下げるのは非常にかんたん。しかし、政府などは全く動かず、マスコミはそれを批判すらしなかった。
全ての関係者が仕組んだ、あからさまなインフレ誘導である。
賃上げが怪しい
マスコミ報道をよく観察してみると、
・大企業・中小企業の多くで初任給を(例えば23万円から30万円へ)大幅引き上げ
・中堅以上の昇給は抑えられているので、若手と中堅で給与接近・逆転が起こる
という事態が発生しているようだ。
たとえば、国家公務員の昇給を人事院勧告から読み解いてみると
昇給前 | 昇給後 | 差額 | 昇給率 | |
22歳 | 196,200 | 220,000 | 23,800 | 12.1% |
30歳 | 236,900 | 255,400 | 18,500 | 7.8% |
40歳係長 | 302,800 | 310,400 | 7,600 | 2.5% |
50歳課長 | 414,300 | 418,600 | 4,300 | 1.0% |
42歳(平均年齢) | 2.7% |
公務員は民間ほど「あからさまな若年層優遇」ではないが、それでも中堅・高齢になると物価上昇を下回る賃上げしか行われていない。
総人件費を抑制しながら、若年層のみ突出してあげた給与水準を今後どうするのか。おそらく、昇給カーブは今年よりもっとひどいもの(中堅・高齢になるとほぼ昇給しない)になるだろう。
欧米のように労働移動のハードルが低い場合は、転職により昇給するため、(多くの労働者は)昇給カーブなどというものに縛られることはない。
しかし、労働移動のハードルが高い日本では、一度就職した企業にしがみつく人が大多数のため、昇給カーブが問題なのだ。小泉進次郎が総裁選でブチ上げた「解雇規制の緩和」が、実はこの問題を解決する方向性を示していたのだが、あまりの拙速な(説明不足な)やり方で機会を潰してしまったようだ。
「釣った魚に餌をやらない」
この方針の賃上げ方法で、果たしてどうなることやら。
若年層に偏った賃上げと、積立方式の報酬比例年金(厚生年金)の行く末
日本の年金は、基礎年金(国民年金)と報酬比例年金(厚生年金)の合計だ。
現在の平均受給額は、基礎年金 5万円と報酬比例年金 11万円の、合計16万円くらいである。
そして、多くの人は知らない(自分で計算したことがない)だろうが、
基礎年金は「支払い年数」に「現在の」物価水準を掛けた額を、報酬比例年金は「過去に実際に支払った掛け金」の合計額(に一定率を掛けた)額となる。
ここで、急速にインフレが進んだと仮定してみよう。
ざっくりとした感覚で書くなら
基礎年金はインフレが進めば、「それに比例して」支給額が増える。ここに問題はない。
問題は報酬比例年金だ
インフレ率 0%、毎月の給与は年収480万円を単純に12で割った額、年金額を計算する率は0.7%(給与額×0.007×12ヶ月/年 = 0.084)として、実際に近い額を計算してみる
給与月額 | 率 | 年金積立額 | |
20歳代 | 400,000 | 0.84 | 336,000 |
30歳代 | 400,000 | 0.84 | 336,000 |
40歳代 | 400,000 | 0.84 | 336,000 |
50歳代 | 400,000 | 0.84 | 336,000 |
年金額(年額) | 1,344,000 | ||
年金額(月額) | 112,000 |
実際の平均額にちかい値が計算されている。
さてここで、2029年までに最低賃金を1,500円にする無茶苦茶な賃上げがあるとする。2025年から2029年まで、毎年7%を少し上回る賃上げとなる。10年で給与は2倍(実際には1.07^10=1.96倍)となる計算だ。
このインフレに対応した報酬比例年金を計算し直してみる。
給与月額 | 率 | 年金積立額 | |
20歳代 | 400,000 | 0.84 | 336,000 |
30歳代 | 800,000 | 0.84 | 672,000 |
40歳代 | 1,600,000 | 0.84 | 1,344,000 |
50歳代 | 3,200,000 | 0.84 | 2,688,000 |
年金額(年額) | 5,040,000 | ||
年金額(月額) | 420,000 |
年金が増える! と喜んではいけない。
給与が40万円から320万円に8倍に増加しているが、年金は11万円から42万円に3.8倍にしか増加していない。
所得代替率が 11万円/40万円=27% から 42万円/320万円=13%に半減しているのである。
現在のレートに換算し直すと、報酬比例年金は5万5千円ほどしかもらえないことになる。国民年金の5万円(これはインフレ比例なので変わらず)と合計して、10万円で暮らせということだ。
前項で指摘した「釣った魚に餌をやらない」方式の昇給カーブなら、年金額は激減するのだ。
この計算は、いま20歳代の若年層のものだ。この記事を読んでいる人が、30歳代、40歳代、50歳代なら、もっとひどい値となるのである。
給与月額 | 率 | 年金積立額 | |
20歳代 | 400,000 | 0.84 | 336,000 |
30歳代 | 400,000 | 0.84 | 336,000 |
40歳代 | 400,000 | 0.84 | 336,000 |
50歳代 | 800,000 | 0.84 | 672,000 |
年金額(年額) | 1,680,000 | ||
年金額(月額) | 140,000 |
実際は、人口構成に沿って労働者数が減り、賃金カーブも上昇する
団塊ジュニア世代が10年後に引退すれば、労働者数は激減する。総人件費を固定したとしても、1人あたりの給与額は増加傾向となる。
つまり、若年層は将来的にそれなりに昇給することになるだろう。
ここまでの話を総合すれば
すでに年金を受給している人たちや、現在の労働人口のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代(氷河期世代)の年金額を激減させることを狙った、強烈なガラガラポンを実行しようとしているのだ。
この話にはオチがある
自民・公明連立政権と経済界、マスコミの「非常に良く出来たストーリーの真実」を知ってしまえば、団塊ジュニア世代以上の消費意欲が激減し、必死で貯蓄(投資)に励むことになるだろう。
結果的に内需の大部分が崩壊し、強烈なデフレ圧力となり、期待された結果と真反対の経済崩壊を起こしてしまうのかもしれない。
アベノミクス、キシダのミクスで「安いニッポン」「インフレと賃上げの好循環」を続けたいのか、本当にそれが正しいのか、投票前に各々がシミュレーションしてみることだ。