07 July 2024

エネルギー必要量、たんぱく質・脂質・炭水化物の制限を計算する

食べ放題のソフトクリームは、いくつまで食べて害がないのか。脂質やカロリー制限値をWeb検索してみると、出典の明記がなかったり、明らかに体型を考慮していない値がぽつんと記載されている。

これらの「いい加減なWebページ」は、標準的な「身長」「体重」で決め打ちした値を掲載しているため、多くの人にとっては参考にすらならない。

論文を読む努力をしない、幼児レベルの四則演算の計算すら行わない「情弱」向けに作られた健康情報Webページは、フェイクニュース並みの有害さがあるにも関わらず規制されていない。

結局、厚労省の基準書から一般的な人に対応した計算方法だけを抜き出して、ここにまとめておいた。

根本の考え方は厚労省「日本人の食事摂取基準」

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厚労省「日本人の食事摂取基準」に、考え方や計算式、定数が示されている。

さらに、運動で消費されるエネルギーは

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国立健康・栄養研究所「身体活動のメッツ(METs)表」を参考にして、カロリー数を求めることができる。

この2つの資料を使えば、各個人の「年齢」「身長」「体重」にカスタマイズされたエネルギー必要量や、たんぱく質・脂質・炭水化物の摂取目標量を計算することができる。

この元データから、全てが計算できるようだ。

JavaScriptによる自動計算

この記事で説明している内容をJavaScriptに落とし込んだものを最初に掲載しておく。(JavaScriptソースコードをダウンロードする

年齢 歳 (18〜64歳)
身長 cm
体重 kg
性別 身体活動レベル

基礎代謝量
  国立健康・栄養研究所の式(Ganpule の式)より
  ( 0.0481 * Weight + 0.0234 * Height - 0.0138 * Age - Sex ) * 1000 / 4.186
  

エネルギー必要量
  基礎代謝量 * 身体活動レベル
  
  

たんぱく質目標量
  基エネルギー必要量 * [13〜20]%エネルギー
  
  
脂質目標量
  エネルギー必要量 * [20〜30]%エネルギー
  
  
炭水化物目標量
  エネルギー必要量 * [50〜65]%エネルギー
  
  


エネルギー必要量の計算

エネルギー必要量の定義は、厚労省「日本人の食事摂取基準」(p.67-p.70)より、次のような説明がなされている。

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最初に、基礎代謝量を計算する

計算方法は厚労省「日本人の食事摂取基準」p.70-p.73において、次のように定義されている

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わかりやすく書き起こすと

エネルギー必要量 = 基礎代謝量 × 身体活動レベル

基礎代謝量 =(0.0481×W + 0.0234×H - 0.0138×A - SEX)×1,000/4.186
※ SEX = 0.4235 @ MAN, 0.9708 @ WOMAN
※ W : 体重(kg), H : 身長(cm)

この算出式を用いて基礎代謝量を計算すると、次に示す厚労省「日本人の食事摂取基準」p.11 表3とp.73 表5で掲出されいている値とほぼ一致する。

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身体活動レベルを考慮し、エネルギー必要量を算出する

身体活動レベルは、厚労省「日本人の食事摂取基準」p.75-p.76で次のように定義されている。

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身体活動レベル2は、通勤や家事労働での歩行時間が1日2時間、勤務先での歩行時間が30分というもの。

(独)国立健康・栄養研究所「身体活動のメッツ(METs)表」に、歩行に関するMETsが細かく説明されている。

通勤や家事労働での歩行METsが中程度の強度(3.0~5.9METs)というのがどの程度の歩行なのか、この表で検証しておく必要がある。

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そして、標準的な身長・体重(前掲 p.11 表3)の場合の必要エネルギー量は次のように求められる。(p.84)

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各自の年齢・身長・体重の場合の必要エネルギー量は、この表とは全く違う可能性があるので、ここまでに示した(報告書から引用した)計算式を用いて個別に求める必要がある。

運動で消費する必要エネルギー量

厚労省のWebページに、運動で消費する必要エネルギー量は次のように定義されている。

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たとえば身体活動レベル2では、通勤・家事労働で2.5時間、職場内で0.5時間の歩行運動が想定されているが、それ以上の運動を行っていれば、その分だけ必要エネルギー量に加算することができる。

私が普段行っている運動のMETsを抜粋して、次に掲載する。

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たとえば、日常的なトレーニングとして次のようなことをやっていれば

20分間のランニング 1.05 × 9.8 METs × (20/60) 時間 × 60kg = 205 kcal
10分間のキツイ体操 1.05 × 8.0 METs × (10/60) 時間 × 60kg = 84 kcal
10分間のユルイ体操 1.05 × 3.8 METs × (10/60) 時間 × 60kg = 40 kcal
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合計 329 kcal

平日の近場の登山では

2時間の上り坂 1.05 × 6.3 METs × 2 時間 × 60kg = 793 kcal
1時間の下り坂 1.05 × 3.5 METs × 1 時間 × 60kg = 220 kcal
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合計 1,013 kcal

これだけの値を、基礎代謝量から算出したエネルギー必要量に加える必要がある。

たんぱく質・脂質・炭水化物の摂取量

たんぱく質、脂質、炭水化物は、摂取量をそれぞれエネルギーに換算した値が使われる。その換算係数は厚労省「日本人の食事摂取基準」 p.166 に次のように引用されている。

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つまり、

たんぱく質の量 (g) = エネルギー摂取量 (kcal) / 換算係数 4 (kcal/g)

脂質の量 (g) = エネルギー摂取量 (kcal) / 換算係数 9 (kcal/g)

炭水化物の量 (g) = エネルギー摂取量 (kcal) / 換算係数 4 (kcal/g)

そして、それぞれの成分をどれだけ摂取すればよいのかを、摂取エネルギー内の比率として次のように説明している。(厚労省「日本人の食事摂取基準」p.170)

20240707-energy-tanpaku-sisitu-tansuikabutu.jpg

たんぱく質

標準的な身長・体重(前掲 厚労省「日本人の食事摂取基準」 p.11 表3)の場合のたんぱく質の目標量は次のように求められる。

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例えば、50歳 男性の場合は、身長169cm・体重68kg・身体活動レベル2として、基礎代謝量 1480kcal、必要エネルギー量 2600kcalと算出される。(前掲の表の通り)

そして、前掲のエネルギー換算係数で割り戻して

2600kcal * 0.14 / 4 = 91g
2600kcal * 0.2 / 4 = 130g

この計算結果は、表8の91〜130g に一致する。

エネルギー必要量の計算方法のところでも書いたとおり、各自の年齢・身長・体重の場合の必要エネルギー量は、この表とは全く違う可能性があるので、ここまでに示した(報告書から引用した)計算式を用いて個別に求める必要がある。

脂質

たんぱく質のところで書いたとおり、次の表は標準的な身長・体重(前掲 厚労省「日本人の食事摂取基準」p.11 表3)の場合の脂質の摂取目標量である。

報告書には計算値が計算されていなかったので、たんぱく質の表に習って主なものを計算して以下のようにまとめてみた。

脂質の摂取目標量(g/日)
性別
年齢脂質飽和脂肪酸脂質飽和脂肪酸
18〜29歳58〜88g21g以下44〜67g16g以下
30〜49歳60〜90g21g以下46〜68g16g以下
50〜64歳58〜87g20g以下43〜65g15g以下

報告書p.127には、国民栄養調査で得られた「実際の脂質の摂取量」が示されている(次表)。これを見ると、見事に摂取目標量のど真ん中の値になっていて、文句なく健康的な国民ということになる。

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炭水化物

報告書には計算値も国民栄養調査の結果も一切示されていないので、%エネルギー表を参考に標準的な身長・体重(前掲 厚労省「日本人の食事摂取基準」p.11 表3)の場合の炭水化物の摂取目標量を計算してみた。

炭水化物の摂取目標量(g/日)
性別
年齢炭水化物炭水化物
18〜29歳331〜431g250〜325g
30〜49歳338〜439g256〜333g
50〜64歳325〜423g244〜317g