11 March 2023

八瀬から坂本へ、比叡山を最短距離で越える

京都から滋賀へ、鉄道駅間という条件で比叡山を最短距離で越える道は、八瀬比叡山口駅と坂本の間を結ぶ松尾道・本坂を通る山道だろうということで、この区間を歩いてきた。

ヤマレコの記事 『 比叡山(八瀬~スキー場跡~延暦寺~坂本)

GPSログ

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区間時刻所要時間
八瀬比叡山口駅 〜 登山口 ケーブル八瀬駅前07:53 - 07:574分
登山口 ケーブル八瀬駅前 〜 西山峠08:00 - 08:4545分
西山峠 〜 スキー場跡08:45 - 09:1025分
スキー場跡 〜 お地蔵さんのある展望休憩所09:10 - 09:166分
お地蔵さんのある展望休憩所 〜 延暦寺 根本中堂09:33 - 09:5320分
延暦寺 根本中堂 〜 本坂登山口・日吉大社鳥居09:53 - 10:2734分
本坂登山口・日吉大社鳥居 〜 JR比叡山坂本駅10:27 - 10:358分

登山口 ケーブル八瀬駅前へ

■ 京阪 本線 中之島駅 06:24 → 天満橋駅 → 出町柳駅 07:29着(運賃 550円)

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京阪 中之島駅

早朝、ほぼ誰も乗車していない列車で中之島駅から出発。天満橋で特急に乗り継ぎ。特急は京橋でほぼ全席が埋まる程度の混雑度合い。

土曜の早朝、通勤? 観光?

出町柳駅で叡山電鉄に乗り換え。こちらの列車も、ほぼ満席状況で出発。

■ 叡山電鉄 出町柳駅 07:37発 → 八瀬比叡山口駅 07:51着 (運賃 270円)

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叡山電鉄 八瀬比叡山口駅

乗客は、ほとんどすべてが修学院駅と宝ヶ池駅で下車していった。終点の八瀬比叡山口駅、まで乗車していたのは、私の他には地元住民と思われる女性2名のみ。

八瀬比叡山口駅で下車し、ケーブル八瀬駅の横にある松尾道登山口に向かう。

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八瀬比叡山口駅とケーブル八瀬駅を結ぶ木造橋は工事通行止

両駅間を結ぶ、高野川に架かる木造橋は工事通行止。 いったん、国道367号に出て迂回する。

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迂回路の、ケーブル八瀬駅前の鉄筋コンクリートアーチ橋

この橋も、鉄筋コンクリート柱の表面が完全に剥がれ、錆びた鉄筋がむき出しになっている部分がたくさんある。力を分散させるアーチ部分も明らかにボロボロで、落橋寸前にも見える。

インバウンド公害が通行しない場所は、放置ですか...。

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叡山ケーブル運休(2023/01/04〜2023/03/17)

叡山ケーブルは恒例の冬季運休中。 一般人が登ってくることが阻止され、静かに山を楽しめる。

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ケーブル八瀬駅の西隣が、松尾道の登山口。標識や案内看板は一切無い

登山口 ケーブル八瀬駅前 〜 西山峠 : 2.0km, 45分

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松尾道の入口。八瀬野外保育センターの看板があるが、登山口を示す看板はない

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登山口から300mほど歩くと、八瀬野外保育センターへの道から、登山道が左側へ分岐

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分岐点の電柱の下に、小さな手製の標識。手前の道からは見えないよう、横向きに設置されている

登山口から600m、渓流を渡る小さな仮設橋を渡ると京都精華学園のグラウンドがある。グラウンドの裏門の前からは、フェンス沿いに山肌を登っていく。

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京都精華学園のグラウンドのフェンス沿いに山道は続く (標高 約190m)

フェンス沿いには、かろうじて登山者の踏み跡があるので、これが登山道なのだろう。

グラウンドに沿ったフェンスが途切れると、法面設置用の仮設階段が現れる。階段の最上部にある携帯基地局のメンテナンス用と思われる。

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携帯基地局に向かう法面設置用の階段を登る

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杉の植林と、雑木林が入り混じった尾根を登る

倒木があるが、通り抜けられるよう処理はされているが、処理レベルは「正式登山道でない場所」相当だ。

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松尾道の標高415m付近にある地蔵。地理院地図では414mの標高点がある付近

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倒木さえなければ、歩きやすい整備された登山道 (標高 約490m)

ケーブル八瀬駅前の登山口から歩くこと45分、西山峠に到着。

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西山峠の地蔵 (標高 約550m)

地蔵が、地理院地図の標高点559m方向の尾根に、点々と設置されている。ここは墓場か何かだったのだろうか...

西山峠 〜 スキー場跡 : 0.8km, 25分

西山峠を経て直進している松尾道は、ここからいったん谷に向かって下っている。 私が向かうのはスキー場跡なので、尾根筋の坂を登る道を選択する。おなじ延暦寺に向かうなら、無駄に高度を失う松尾道を直進するのではなく、登り続けるスキー場跡方向のほうが「得」だ。

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西山峠の地蔵前から、スキー場跡方向(左側)・八瀬駅方向(右側)を眺める

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西山峠から数十メートル登った地点、道の真ん中に梵字の石柱

山道はだんだん不明瞭になり、ロープが張られた急登も現れる。

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急登のくさり場。ビニール製のトラロープが張られている (標高 約600m)

標高620m付近で傾斜がゆるくなった場所、何本もの倒木が尾根筋を塞いでいる。 ここまでかろうじて存在していた、登山道の踏み跡も完全に消えているので、地図アプリを見ながら尾根筋をたどる。

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倒木が全く処理されず、登山道の踏み跡もほぼ消えている (標高 約620m)

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急登の尾根筋を振り返って撮影 (標高 約660m)

杉林の中を登ってきて、いきなり視界が開ける。右手には地滑りでできた滑落崖があり、このせいで視界が開けているのだ。

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標高670m付近の滑落崖から見た京都市街地の眺め

快晴だがかなり霞んでいる。湿度も、大気汚染(Ox, PM2.5)の値も低いのに霞んでいるのは何でだろう

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気温・湿度・光化学オキシダント・PM2.5のグラフ (気象庁(京都)と、環境省(壬生)のデータを合成)

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比叡山空中ケーブル 高祖谷駅跡 (標高 約700m)

第二次大戦前、スキー場跡付近から延暦寺西塔付近の尾根筋までの間を結んでいた、比叡山空中ケーブルの高祖谷駅の駅舎跡が残っている。地理院地図にも、建物が2個点在しているので、わかりやすい。

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第二次大戦前の比叡山交通機関地図(オークションのページより引用)

かつて、叡山ケーブルから比叡山空中ケーブルに乗り換える客が歩いた道が、等高線に沿ってほぼ水平につけられている。落ち葉に埋まっているが、平らな道だったことが感じられる。

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高祖谷駅(跡)からケーブル比叡駅に向かう道(右 倒木)と、スキー場跡に向かう道(左)が分岐する地点

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スキー場跡に到達する直前の尾根、道は不鮮明

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八瀬からの登山道は、スキー場のレストハウスがあった北端角の裏手に出てくる (緑色の電柱の横の斜面を登ってくるが、道は不明瞭)

スキー場跡 〜 お地蔵さんのある展望休憩所 : 0.4km, 7分

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比叡山人工スキー場跡。2015年にリフトやレストハウスなどは撤去され更地になった (標高 約760m)

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スキー場跡の脇にある梵字の石柱

ここから先は、作業用車両も走る林道を延暦寺西塔に向かって歩く。

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スキー場跡から延暦寺西塔へ向かう林道と標識

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お地蔵さんある展望台 (標高 約770m)

登山口のケーブル八瀬駅からここまで、誰一人見かけることがなかった。ケーブルカーが運休なので、比叡山を京都市側から登る人もほとんどいないのだろうか。

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展望台の右方向(北方向)の眺め。大原の田畑と、右側には横高山・水井山が見える

ここで20分ほど休憩し、昼食。 その間に、トレランの人が1人、林道を駆け抜けていったのを見かけたのが、この日に始めて見た登山者。

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昼食(チーズとオニオンのフォカッチャ、どら焼き)

お地蔵さんのある展望休憩所 〜 延暦寺 根本中堂 : 1.3km, 17分

林道をしばらく下って行くと、登山者は延暦寺境内を無料通過できる旨の掲示がある。

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延暦寺を無料通過できる旨の滋賀県掲示

府県境に差し掛かると、鎮護国家の石碑がある。

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鎮護国家の石碑 (標高 約740m)

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史跡 延暦寺境内(昭和11年4月建設)の石碑

ここから先が延暦寺。先程の立て看板に書かれていた無料通過なのだが、料金所はまだ先にしかない。

展望台から5分ほど歩くと、林道は奥比叡ドライブウェイに突き当たる。

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奥比叡ドライブウェイに突き当たる地点。西塔方向は道路を越える橋を渡る。東塔地区(根本中堂)は道を直進 (標高 約720m)

しばらく行くと延暦寺東塔(とうどう)地区の料金所(循拝受付)がある。登山者として無料通過する旨を自己申告すると、「お寺は見ないですね」と念を押される。

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東塔地区の料金所(循拝受付)前より。登山者は左へ。有料拝観者は右の阿弥陀堂方向へ

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延暦寺管理部 御用所の事務所や倉庫がある

御用所の写真、右側の斜面の上に阿弥陀堂と東塔がある。無料通過の登山者は、これらの伽藍を見ることはできない(ことになっている)。

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延暦寺 戒壇院

Wikipediaによれば、延宝6年(1678年)再建。僧侶に戒律を授ける場所だそうだ。

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延暦寺 大講堂

寛永11年(1634年)建立。もとは東麓・坂本の東照宮の讃仏堂であったものを1964年(昭和39年)に現在地に移築したものだそうだ。

僧侶が「こらから延暦寺の説明をしますので、おはいりください」と周囲にいる参拝者に声掛けしている。無料通過の私は、外観のみ見て通過である。

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延暦寺 根本中堂

延暦寺の総本堂で、延暦寺五大堂の一つ。現在の建物は織田信長による比叡山焼き討ちの後、寛永19年(1642年)に徳川家光によって再建されたものだそうだ。

最澄の時代から続く「不滅の法灯」があるのもこの建物内だ。2016年から10年間の大改修中。

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休憩所(左側)・大黒堂のある広場 (標高 約680m)

休憩所のきれいなトイレを拝借。拝観料払ってないので、申し訳ない...

延暦寺 根本中堂 〜 本坂登山口・日吉大社鳥居 : 3.0km, 34分

ここから標高差530mの本坂を一気に駆け下りる。

そのスタート地点、延暦寺会館横の日陰には、まだ雪が残っていた。

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延暦寺会館の北側道路に残っていた雪

本坂を降り始めてすぐ、まだ道がコンクリート舗装されている区間に法然堂がある。ここは、浄土宗を開宗した法然上人が15歳の時に剃髪得度した場所だそうだ。

法然上人といえば浄土宗の開祖。京都で言えば知恩院が有名。 それに対して延暦寺は最澄が開祖である天台宗の寺院。

延暦寺の公式Webページには、平安末期から鎌倉時代はじめにかけては、法然・栄西・親鸞・道元・日蓮といった各宗派の開祖たちが比叡山で学んだと書かれている。宗派を超えて修行を受け入れていたのだ。

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延暦寺 法然上人得度御旧跡

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延暦寺 本坂 (標高 約600m付近)

ヤマレコ アプリの下山予定時刻が、刻々と繰り上げられてゆき、10時45分前後で安定する。

JR比叡山坂本駅からの列車乗り継ぎを検索すると、10時40分という絶妙の時刻のものがある。

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微妙な速度で駆け下りるスピードを維持して、麓の日吉大社鳥居前まで約35分でやってきた。

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延暦寺 本坂の坂本五丁目灯籠(左側)と、日吉大社 三の鳥居(右側)

本坂登山口・日吉大社鳥居 〜 JR比叡山坂本駅 : 1.22km, 9分

日吉大社鳥居前からJR比叡山坂本駅までは、日吉馬場と呼ばれる一直線の道。

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県道316号 日吉馬場と二の鳥居

10時35分、5分の余裕でJR比叡山坂本駅に到着。

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JR比叡山坂本駅

■ JR 湖西線・京都線 比叡山坂本駅 10:40発 → 山科駅 → 大阪駅 11:28着 (運賃990円)

山科駅で、待ち時間ゼロで普通から新快速に乗り換え。どちらの列車も、座席の半分くらいが埋まる混雑度合い。

新快速の乗客は、ほぼ全てが京都駅で入れ替わり満員となる。次の新大阪では、新幹線から乗り継いできた旅行客で超満員になる。 ほぼ全てが大阪駅で降りるのだから、わざわざ混雑して車内通路も狭いクロスシートの新快速に乗ってくるとは、常識がない...。