24 January 2022

FIRE(早期リタイア)のための年金額詳細計算方法

将来もらえる年金額は、「ねんきん定期便」で概算額を確認できるのだが、「○○歳でリタイアした場合、いくらもらえるのか」という疑問に答えてくれるものではない

そこで、年金機構の「ねんきんネット」で閲覧できる各月の「標準報酬月額」や「標準賞与額」から完璧に年金受給(予定)額を計算する方法を調べてみた

年金額の計算方法

年金機構のWebページより、年金の制度・手続き → パンフレット → 年金の給付に関するもの とメニューをたどると、「老齢年金ガイド(老齢基礎年金・老齢厚生年金の仕組み)」(PDF)がダウンロードできる。

老齢基礎年金(いわゆる国民年金)

老齢年金ガイドのPage.2より

老齢基礎年金 = 780,900円 × 納付月数 / 480ヶ月

480ヶ月(40年)すべて納付すれば、満額の約78万円がもらえる。

老齢厚生年金(共済年金)の報酬比例部分

老齢年金ガイドのPage.9より

20220124-nenkin-housyuhirei-keisan.jpg

平成15年(2003年)3月以前は、賞与を算定額に含まず

老齢厚生年金 報酬比例部分 = ∑ 標準報酬月額 × 乗率(7.125)/1000

平成15年(2003年)4月以降は、賞与も算定額に含み

老齢厚生年金 報酬比例部分 = (∑ 標準報酬月額 + ∑ 賞与額 ) × 乗率(5.481)/1000

= ∑ 標準報酬額(年収)× 乗率(5.481)/1000

つまり、平成15年以前は賞与からは年金掛金は差し引かれていなかったので、計算方法も違うということだ。

老齢厚生年金(共済年金)の職域加算

さらに... 公務員共済の場合は「経過的職域加算部分」(一般企業で言うところの企業年金)が一律で決まっているので次の加算乗率を加えると一括で計算できる

国家公務員共済の場合、都道府県職員共済の場合、市町村職員共済の場合など、加算率はすべて同じ)

平成15年(2003年)3月以前は乗率に+1.425 を加える。平成15年(2003年)3月以降 平成27年(2015年)9月以前の分は乗率に+1.096 を加える。

つまり、共済組合員の場合は

平成15年(2003年)3月以前

老齢厚生年金 報酬比例部分 = ∑ 標準報酬月額 × 乗率(7.125+1.425)/1000

平成15年(2003年)3月以降 平成27年(2015年)9月以前

老齢厚生年金 報酬比例部分 = (∑ 標準報酬月額 + ∑ 賞与額) × 乗率(5.481+1.096)/1000

平成27年(2015年)9月以降 ... 年金一元化で乗率が厚生年金と統一化された

老齢厚生年金 報酬比例部分 = (∑ 標準報酬月額 + ∑ 賞与額) × 乗率(5.481)/1000

実際に計算してみる

実際は「ねんきんネット」の「月別の年金記録を確認する」より、各月の標準報酬月額と標準賞与額を全て表計算シートに転記して計算するのだが、今回は民間給与実態統計調査と賃金構造基本統計調査より、日本の平均的な給与額をもとに計算してみる。

日本の平均的な給与額

(1)令和2年 民間給与実態統計調査結果 https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm より、3-10表 1年勤続者の年齢階層別給与所得者数・給与総額・平均給与 における【男性】の税引き前 年間所得値は

年齢階層(歳)平均給与(円/年)
20〜242,768,000
25〜293,934,000
30〜344,583,000
35〜395,175,000
40〜445,709,000
45〜496,211,000
50〜546,563,000
55〜596,681,000
60〜645,205,000

(2)令和2年 賃金構造基本統計調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/dl/13.pdf より、第3表 学歴、性、年齢階級別賃金及び年齢階級間賃金格差 における【男性】の税引き前 所定内月給は

年齢階層(歳)平均賃金(円/月)
20〜24229,100
25〜29266,200
30〜34313,900
35〜39365,200
40〜44416,400
45〜49461,500
50〜54526,600
55〜59516,500
60〜64354,800

(1)と(2)を合成して、年収ー月収×12=賞与 の計算をしてみると

年齢階層(歳)a.平均給与(円/年)b.平均賃金(円/月)c.賞与 (=a-12*b)
20〜242,768,000229,10018,800
25〜293,934,000266,200739,600
30〜344,583,000313,900816,200
35〜395,175,000365,200792,600
40〜445,709,000416,400712,200
45〜496,211,000461,500673,000
50〜546,563,000526,600243,800
55〜596,681,000516,500483,000
60〜645,205,000354,800669,000

統計の出所が違うため、同じ令和2年のデータでも賞与を計算するとおかしな値となっている。

(3)年金計算の乗率より、賞与が年収に占める割合を逆残して算出したものを用いる

b=月収, c=年間賞与 として、平成15年4月前後で賞与の算入のありなしによって年金算定額が変わらないとすれば、次の等式が成り立つ

(b*12) * 7.125 = (b*12 + c) * 5.481

c = 3.5993 * b

年間賞与は、給与の 3.5993 ヶ月分ということになる

これをもとに、(1)の年収値を用いて

年齢階層(歳)a.平均給与(円/年)b.平均賃金(円/月)c.賞与(円/年)
20〜242,768,000177,436638,769
25〜293,934,000252,179907,849
30〜344,583,000293,7821,057,615
35〜395,175,000331,7311,194,231
40〜445,709,000365,9621,317,462
45〜496,211,000398,1411,433,308
50〜546,563,000420,7051,514,538
55〜596,681,000428,2691,541,769
60〜645,205,000333,6541,201,154

この年収、月給・賞与額を以下の年金試算で使うこととする。

年金額の試算

現在50歳の人の場合、30歳時点が乗率の切り替わる(賞与分の算定が切り替わる)平成15年(2003年)である。

年齢階層(歳)a.平均給与(円/年)b.平均賃金(円/月)c.賞与(円/年)d.月数乗率e.年金額
20〜2100024
22〜242,768,000177,436638,769367.12545,512
25〜293,934,000252,179907,849607.125107,807
304,583,000293,7821,057,615127.12525,118
31〜344,583,000293,7821,057,615485.481100,478
35〜395,175,000331,7311,194,231605.481141,821
40〜445,709,000365,9621,317,462605.481156,455
45〜496,211,000398,1411,433,308605.481170,212
50〜546,563,000420,7051,514,538605.481179,859
55〜596,681,000428,2691,541,769605.481183,093
合計4801,110,355

※ e = (b * d + c * d / 12) * 乗率/1000 = a * d / 12 * 乗率/1000

これに、基礎年金分 780,900円 を加算すると、年金額となる

年金額 = 基礎年金分 + 報酬比例分 = 780,900円 + 1,110,355円 = 1,891,255円


世の中で言われている【男性】【厚生年金】 の平均受給額が165,000円/月(1,980,000円/年)という値と似たような金額になり、世の中の人は平均年収の統計値と似た収入なのだと、改めて確認できた。

FIRE(早期リタイア)した場合

たとえば55歳でリタイアした場合、その後の無職期間も国民年金は掛け金を払い続けたという条件なら、55〜59歳の報酬比例分183,093円/5年分だけを年金額から差し引けばよい

年金額(55歳リタイア) = 1,891,255円 - 183,093円 = 1,708,162円

となり、この差額は資産から供出するか、年金受給の繰り下げで増やすかで、毎月の収入を同一化出来る

繰り下げ受給の場合は、1ヶ月で+0.7%増額(1年では+8.4%)となるので、

(1,891,255円 - 1,708,162円) / 1,891,255円/0.7% = 9.7%/0.7% = 13.8ヶ月

約1年繰り下げ受給すれば、年金額に「損はない」 という結果だ

50歳から59歳まで、すべての年齢で計算した結果は

FIRE年齢 年金額(円/1年分) 減額率 復元繰下(ヶ月)
50 1,528,303 19.2% 27.4
51 1,564,275 17.3% 24.7
52 1,600,247 15.4% 22.0
53 1,636,219 13.5% 19.3
54 1,672,191 11.6% 16.5
55 1,708,162 9.7% 13.8
56 1,744,781 7.7% 11.1
57 1,781,400 5.8% 8.3
58 1,818,018 3.9% 5.5
59 1,854,637 1.9% 2.8
60 1,891,255 0% 0.0

今後の年金法令の改正で、受給開始年齢の引き上げが行われたら...

最速で2023年度に法改正が行われ、前回同様7年後から延伸開始となれば、次のような受給開始年齢となる

生年月日 生年月日 制度適用 受給開始年齢
男性 女性 年度 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳




























1949/4/2 ~ 1954/4/2 ~ 2009



















1953/4/2 ~ 1958/4/2 ~ 2014



















1955/4/2 ~ 1960/4/2 ~ 2017



















1957/4/2 ~ 1962/4/2 ~ 2020



















1959/4/2 ~ 1964/4/2 ~ 2023



















1961/4/2 ~ 1966/4/2 ~ 2026



















1963/4/2 ~ 1968/4/2 ~ 据え置き



















1965/4/2 ~ 1970/4/2 ~ 2031



















1967/4/2 ~ 1972/4/2 ~ 2036



















1969/4/2 ~ 1974/4/2 ~ 2041



















1971/4/2 ~ 1976/4/2 ~ 2046



















1973/4/2 ~ 1978/4/2 ~ 2051




















参考資料

・『年金受給開始年齢「70歳」はほぼ確定...最悪のシナリオを読む』(Yahooニュース 2021/08/27)
・『年金の支給開始年齢について』(厚生労働省 2011年10月)