『高松・琴平 その2 : 金刀比羅宮』からの続き
駅のコンコースにある大きな沿線の観光案内をじっくり見てみると、高松都琴平の間に幾つかの名所があることが分かる。その中で、今回は「四国八十八箇所 第83番札所 一宮寺」に向かうことにする。
高松市一宮へ
■ 琴電琴平 09:43発 → 一宮 10:22着 (540円)
2両編成の電車に乗客は20〜30人ほど乗車して、始発の琴平を出発。讃岐平野の水田は田植え前で、まだ地面が見えている状態。ところどころにある農業用貯水池(ため池)は、5月頃に水田に水を張るための水を満々と貯めているのが車窓からも見える。
高松と琴平のちょうど中間の綾川駅前に、巨大なイオンモールがある。綾川駅ではイオンモールに向かう乗客の乗り降りはほとんど無く、この辺りは自動車社会なのだろう。まあ、電車の運賃が高すぎるというのも原因かもしれないが…。 道路だけでなく、鉄道も公共インフラなのだから平等に税金を投入してほしいものだ。
一宮駅で下車。プラットホームの柱に『途中下車指定駅』と掲示されている。途中下車できるんだ…。 琴平駅の運賃地図や路線図にはそれらしきことは書かれていなかったので、気付かなかった。乗る前に、Wikipediaをくまなく見ると得することがあるということやね。
郊外の小さな駅なのに綺麗な駅舎に、巨大な駐輪場。近くに県立高松南高校があるから乗客が多いのだろう。電車も、昼間は高松とこの駅の間で折り返す2便が加わり、1時間に4本走っていてちょっとだけ便利。
香東川の支流に沿って北へ500mほど、水田の向こうに一宮寺の瓦屋根が見えてきた。 お遍路さんは駅から歩くわけではないので、周辺に寺への方向を示すような看板は一切無し。
みちしるべの石柱発見。すぐ脇には松並木の参道。
讃岐国一宮 田村神社
お寺の瓦屋根はまだだいぶ遠くなのに、道路に巨大な鳥居と松並木の参道。寺なのに鳥居?
鳥居の額には讃岐国一宮 田村神社とある。 Wikipediaによれば、ここは湧水地なので水神信仰を基盤とした神社だそうで、奈良時代に行基が創建した歴史ある神社だそうだ。
寺の山門をくぐると、大鳥居を持つ本殿らしき大きな建物がが2つある。左が本殿、右が支社の宇都伎社だそうだ。
神社の公式Webページには『田村神社のご祭神は龍神の姿で顕現なされた』とされていて、それでこの巨大な龍神像ですか。 龍の神様は黄金が好きなようで、絵馬ならぬ、小判に願いを書いておくのが良いということなのだろうか。
四国八十八箇所 第83番札所 一宮寺
さて、田村神社の山門まで戻ると、小さな看板に「一宮寺 こちら」というのがある。神社の敷地に沿って北に伸びる路地を少し歩くと、一宮寺があった。
境内には何人かの巡礼者がいる。納経帳の受付台の前には満開のハナミズキ。寺を訪問した証として墨書をもらうノートを、京都では朱印帳といい、こちらでは納経帳と呼ぶらしい。寺でも売っているし、1500円程度でAmazonなどでも買えるし、自分で和紙を切って製本しても良いそうだ。
参拝を済ませ、一宮駅で折り返す電車の時間に間に合うよう駅へ戻る。
■ 一宮 11:07発 → 片原町 11:25着 (350円)
高松中央商店街辺りで うどん食べ歩き
片原町の駅を出ると、目の前は高松中央商店街のアーケードとなっている。何本かの道がアーケードで覆われていて、総延長は大阪の天神橋筋商店街より100mほど長い2.7kmで、日本一の長さというのが売りらしい。
パリが発祥と言われているガラスドームを持ったアーケード通り(パサージュ)のようだ。
天六商店街より広い道路幅のアーケード通りは、お客さんの姿も疎ら。Wikipediaによれば『平日・休日共に四国トップクラスの通行量』だそうだが、いかんせん四国全体が人口減少で過疎化しつつあるので、その中で競ってもこの程度の人出なのだろう。
商店街にはうどん屋がたくさん並んでいる。セルフ式うどん店のこんぴらや兵庫町店に入店。セルフ式カウンターの上に掲示された写真付きメニューには「季節限定 しっぽくうどん」というのがある。
「しっぽく」って、長崎で地元化した中国料理の「卓袱料理」のことだろうか。とりあえず、そのうどんを頼んでみることに
出てきたのは、鶏肉を使ったけんちん汁にうどんを入れたようなもの。このボリュームで450円とは、何と言う安さ。
香川県のWebページでは『しっぽくうどんは、吹く風が冷たくなりはじめる、秋口から冬にかけてのうどんの食べ方で、讃岐の冬の代表的な郷土料理です。数種類の季節の野菜を、汁とともに煮込む方法で、ゆでたうどんの上から共に煮た野菜をかけたものです』と説明されていて、有名な地元料理のようだ。
続いて、中央商店街の1本北側の通り、高等裁判所前の植田うどんへ。
ちょうど12時となり、近隣の四国電力本店や中央郵便局辺りから昼食にやってくる客でお店は満員となる。
高松城跡の玉藻公園
高松城跡に向かう。Wikipediaによれば、1587年、豊臣秀吉の四国制圧の後に生駒親正により築かれた城で、江戸時代に城主となった松平頼重が改築したのが今の城の姿だそうだ。
老朽化により1884年に天守が解体撤去され、いまは天守台だけが残っている。 高松中央商店街側から北上し四国電力本店と西日本放送本社の間を通り過ぎると、目の前に中濠と艮櫓(丑寅櫓)が現れる。
艮櫓は1677年頃に建てられ、本来は城の北東角にあったが、県民ホールを建てるために撤去されて、1965年に城の南東の現在地に移設されたそうだ。 (うしと = 丑寅 とは、北東の方角を示す)
艮櫓(うしとやぐら)横、旭橋を渡った所にある旭門に入場口があり、200円払って玉藻公園(城址公園)に入る。桜の季節が終わっているため、芝生広場となっている桜の馬場は中学生の遠足の集団が居る以外は、空いている。
天守台との間には更に内濠があり、海水を引き込んでいるので「池の鯉」ではなく「池の鯛」が泳いでいる。
天守を復元する計画もあるそうだが、やはり資金が集まらないのだろう。 大阪城や和歌山城のように、昭和初期までは、外観だけを城に似せて鉄筋コンクリートで適当に復元してしまうという例が多かったが、さすがに現代では建設方法も可能な限り似せて復元しないと「城マニア」が許さないだろう。
三の丸には1917年に建てられた松平家高松別邸跡の披雲閣があり、いまは貸会議室として使われているようだ。披雲閣の周囲の庭園は自由に歩ける。
高松港とJR高松駅前
玉藻公園(高松城跡)を出て、北側に隣接する高松港(フェリー乗り場)へ。高松城の敷地は、フェリー乗り場に接していて、内濠との間には水門があり海水が濠に流れ込んでいる。海水を濠に引き込んでいる城を「海城(うみじろ)」というそうで、日本三大海城として高松城、今治城、中津城が有名だそうだ。
櫓の前は、濠ではなく砂浜。櫓は直接海に面していたが、いまは海との間に四国フェリーの桟橋がある。
船の左側に見えるのは高松港玉藻防波堤灯台(赤灯台)
ジャンボフェリーで神戸へ
四国名物「一六タルト」を買うためにJR高松駅へ。構内には「うどん県 さぬきうどん駅」との立て看板が…。 駅構内のセブンイレブンが土産物店を併設していて、高地や愛媛を含め、四国の名産品をどっさりと置いている。 今回は定番の一六タルトを1本購入(680円)。
■ JR高松駅前(高松駅バスターミナル) 14:00発 → 高松東港 14:15着
14時のジャンボフェリー連絡バスに乗り、高松東港へ。 バス運転手が無線で「乗客10名」と言っていたので、今回乗るフェリーの徒歩客は10名ほどなのだろうか。(自家用車などで高松東港へ送ってもらう人も居るだろうから、もうすこし徒歩客が居るのかもしれない)
■ 高松東港 14:30発 → 神戸三宮フェリーターミナル 19:15着
連絡バスを降りて、ターミナルビルの切符売り場を素通りして乗船口へ。神戸で往復券を買っているので、ここで切符売り場に並ぶ必要はない。 すでに、乗船開始時刻を過ぎているので、乗船口には誰も並んでいない。
船内に入り、第3デッキの和室、今朝寝転んでいた場所と同じ所を確保する。といっても、今朝乗ってきた船よりも遥かに空いていて、どこでも好きな場所を確保し放題だ。 展望デッキに出て、景色を眺める。高松東港を出ると、屋島の西側から北端を舐めるように通過。ここは平安時代末期の源平合戦での「屋島の戦い」で有名な場所だ。 GoogleMapでは島というより半島だが、平安時代にはちゃんとした島だったのだろう。
都落ちした平氏は屋島に立て篭もっていた。渡辺津(現 大阪市福島区)を出航し勝浦(現 徳島県)に上陸した源氏は、四国の北岸沿いに屋島までやって来て交戦。『扇の的』のエピソードは上の写真の庵治半島と屋島の間の湾で行われたそうだ。屋島の戦いで敗退した平氏は、彦島(現 山口県)に転進していったという。屋島の戦いは高松市のWebページに写真や地図付きで詳しく説明されていて分かりやすい。
15時40分、小豆島の坂手港に入港。15分ほど停泊した後、再び神戸に向けて出発する。桟橋の徒歩客用タラップからは10名ほどが乗船してきたようだ。快晴の青空のもと、小さい島が所々にある瀬戸内海を東へ。
第2デッキの売店へ。高松の船なので「讃岐うどん」を売っていたりする。小豆島がオリーブの名産地ということで、オリーブうどんを食す。
夕日が西の水平線に落ちる頃、明石海峡大橋の下を通過する。フェリーの船内には、「明石海峡大橋を通過します」との放送が流れる。
中央支間(2つの主塔の間の距離)は1,991m、航路高さ(海面から橋の下端まで)65m。船で真下を通過しても、橋の下端はだいぶ遠くに見える。 それに、ゆっくり通過すると思っていたら、案外早いスピードで船が進んでいることが実感できる。
19時過ぎ、15分ほど定刻より遅れて三宮フェリーターミナルに到着。