ビルトイン・ガスコンロでお湯を沸かす場合の効率がどれくらいなのか、測定してみた
■ 検証環境
ガスコンロ
・メーカー ： ハーマン製 DG3110M
・強火バーナー ： 4.77kW （13A）
・標準バーナー ： 2.67kW （13A）
・小バーナー ： 1.40kW （13A）
・グリル ： 1.98kW （13A）
利用したケトルと鍋は
・LUCKYWOOD製 ケトル ステンレス 971g
・ホームセンター コーナン製 28cm鍋 蓋270g + 本体706g = 976g
効率の計算方法
日本エレクトロヒートセンターが発行している『電化厨房機器性能指標基準』によれば、効率の計算式は次のようなものだ
ηs ＝ (C * Ms * ⊿θ) / (3600 * Pt)
ηs : 立ち上がり熱効率
Ms : 加熱に用いる水の質量 (kg)
⊿θ : 上昇温度
C : 水の比熱 4.19 KJ/kg℃
Pt : 消費電力量 kWh
この式には落とし穴があり、鍋も同時に温めるため、鍋も熱量を必要とするところである。
この欠点を修正したのが、次の式
η ＝ (C1 * Ms1 + C2 * Ms2) * ⊿θ / (3600 * Pt)
C1 : 水の比熱
Ms1 : 水の質量 4.19 kJ/kg℃
C2 : 鍋 or ケトルの比熱 0.59 kJ/kg℃ （SUS304 or SUS316)
Ms2 : 鍋 or ケトルの質量
ケトルを弱火バーナーで沸騰させた時の効率
水 1リットル （1kg）
最初の温度 16℃
沸騰までの時間 7分2秒 （422秒）
必要熱量 ＝ (4.19 * 1 + 0.59 * 0.971) * (100 - 16) ＝ 400 kJ
実際の熱量 ＝ 2.67 kJsec * 422 秒 ＝ 1127 kJ
効率 η ＝ 400 kJ / 1127 kJ ＝ 35%
ケトルを強火バーナーで沸騰させた時の効率
水 1リットル （1kg）
最初の温度 16℃
沸騰までの時間 6分7秒 （367秒）
必要熱量 ＝ (4.19 * 1 + 0.59 * 0.971) * (100 - 16) ＝ 400 kJ
実際の熱量 ＝ 4.77 kJsec * 367 秒 ＝ 1750 kJ
効率 η ＝ 400 kJ / 1750 kJ ＝ 23%
ケトルが小さく、強火バーナーの炎が飛び出るくらいなので、効率が悪いのは当たり前だ。バーナーの炎が飛びでない、巨大な28cmの鍋で実験する
28cm鍋を強火バーナーで沸騰させた時の効率
水 1リットル （1kg）
最初の温度 14℃
沸騰までの時間 4分55秒 （235秒）
必要熱量 ＝ (4.19 * 1 + 0.59 * 0.976) * (100 - 14) ＝ 410 kJ
実際の熱量 ＝ 4.77 kJsec * 235 秒 ＝ 1120 kJ
効率 η ＝ 410 kJ / 1120 kJ ＝ 36%
強火バーナー 名誉回復 （笑
結論
ガスコンロの効率は、だいたい3割程度。
小さい鍋を使うと、もっと落ちる。
大阪ガスでは、ガスコンロの効率を56％とホームページで例示しているが、どういう実験条件なのだろう…
この効率は、東京ガスでもおなじで、どうせ実験もしていない、営業的な値なのだろう。あるいは、実験室レベルの、排熱まで取り込んで利用しちゃうような特殊な鍋でも使ったのだろうか。
ガス料金
ガス料金も計算してみる
大阪ガスの『ガス料金計算方法』を参考にすると、“1ヶ月のご使用量が50ｍ3の場合、料金表Bが適用されます。”と書かれているため、165.37円／m^3 である。単位は立法メートル。 発熱量換算表は、『大阪ガスデータブック XI』に“標準熱量 45MJ/m^3”と書かれているので
1 (kWh) ＝ 1*3600 (kJ*sec) ＝ 1*3600 / 45000 ＝ 0.08 (m^3)
となる。
お湯1リットルを沸かす（室温16℃→100℃）の場合に必要な1120kJに必要なガス量は
1120 (kJ) ＝ 1120 / 3600 (kWh) ＝ 0.311 kWh → 0.311 * 0.08 (m^3) ＝ 0.025 (m^3)
1リットル沸騰させる料金 ＝ 0.025 * 165 ＝ 4.12円
もっと根本的に、各バーナーで1時間全力で使った場合の料金は…
強火バーナー ： 4.77 kW * 1 h → 4.77 * 0.08 ＝ 0.382 m^3 → 0.382*165 ＝ 63円
標準バーナー ： 2.67 kW * 1 h → 2.67 * 0.08 ＝ 0.213 m^3 → 0.213*165 ＝ 35円
