14 February 2016

トランジスタをスイッチとして使う場合のベース抵抗の選定

トランジスタをスイッチとして使い、マイコンの出力を増幅する場合、「ベース抵抗」の選定方法のメモ

テスト回路

20160214-transistor-switch.png

・マイコン : PIC12F1822
・NPNトランジスタ : 2SC1815-Y
・負荷 : 2.5cm角ファン Nidec 12V 0.05A

マイコン出力ではなく、トランジスタ増幅の理由

20160214-pic12f1822-maxcurrent.jpg
PIC12F1822のデジタルI/O最大定格電流

今回テストに使う小型ファンは12V, 50mAであるが、5Vでは26mA(実測値)である。計算上は12V/5V × 50mA → 20mAのはずだが、少し大きめの電流が流れるようだ。どちらにしても、最大定格25mAのPICデジタルI/Oで駆動するには大きすぎる電流値。

トランジスタ増幅を使うのが手っ取り早い方法だ

ベース抵抗の選定

今回つかうNPNトランジスタ 2SC1815-YのhFEは実測値で150のものだ。一般的に、2SC1815のhFE値は次のような範囲であると言われている

ランクhFE
O70 〜 140
Y120 〜 240
GR200 〜 400
BL350 〜 700

また、ベース=エミッタ間の飽和電圧 Vbe = 1.0V である。

20160214-2sc1815-datasheet.jpg
2SC1815データシート

20160214-transistor.png

増幅率の定義 : hFE = IC / IB

増幅して流したい負荷電流は IC = 26mA、増幅率 hFE=150より、ベース側に流すべき電流は

IB = IC / hFE = 26mA / 150 = 0.17mA

となり、ベース抵抗値 RBは、トランジスタのスイッチ用途という特殊な条件(飽和電流条件)の時に抵抗に掛かる電圧の「 ベース・エミッタ間飽和電圧 VBE = 1.0V 」を考慮して

RB = ( V - VBE ) / IB = (5.0V - 1.0V) / 0.17mA ≒ 23kΩ

なお、hFEは下図(オレンジ色の矢印)のように温度によって低下したりするので、だいたいhFE実測値の半分〜1/3程度で設計すれば良いそうだ。

20160214-2sc1815-datasheet2.jpg
2SC1815 hFEの温度による低下

つまり、hFE = 50 程度として

IB = IC / hFE = 26mA / 50 = 0.51mA

RB = VB / IB = (5.0V - 1.0V) / 0.51mA ≒ 7.8kΩ

実測

(1) RB = 4.7kΩのとき、IB = 0.8mA , IC = 26mA
(2) RB = 22kΩのとき、IB = 0.19mA , IC = 24mA
(3) RB = 33kΩのとき、IB = 0.11mA , IC = × : ファン回転せず

(2)が、hFE = 150 の実測値ピッタリに合わせたもので、負荷(ファン)の駆動電流をなんとかギリギリ賄えている状態。
これより小さなベース抵抗RBを選択すると、トランジスタによるICの増幅が使いきらない状態(飽和状態)となり、トランジスタをスイッチとして利用しているということになる。

実際の回路作成時の選定は (1)のように、hFEが1/2 〜 1/3程度に性能低下した場合を想定してRBを決める。

コレクタ遮断電流ICBO対策

ベースに電圧が加えられていない時、つまりマイコンがベースに接続されたピンをLoにしている場合、コレクタからベースに向かって漏れ電流が発生する。2SC1815の仕様書ではICBO = 1μAと書かれている。

20160214-transistor-rbe.png

実際に回路作成する時には、この図のようにベースとエミッタの間に適当な抵抗を入れて、この抵抗(RBE)を通してグランド側に電流を流してやることで、トランジスタが反応してしまう(ONになる)のを防ぐ。RBEは、その両端にトランジスタを作動させるおよそ0.1V程度(経験値)、あるいは仕様書(IBとVBEのグラフ)より0.4V〜0.6V程度がかからないような抵抗を入れれば良いとされ

RBE = V / ICBO = 0.4V〜0.6V / 0.1μA = 4kΩ〜6kΩ

この抵抗より小さなもの(経験値的には1kΩ程度なら0.1V対応)を入れておけば良いと言われている。

RBとRBEの選定

20160214-icbo-calc.png

「コレクタ遮断電流対策無し」の場合、この記事の前半で計算したようにベース抵抗 RB = 4.7kΩで、ベース電流が約0.8mAである。また、トランジスタが飽和状態の時のベース・エミッタ間飽和電圧 VBE = 1.0V を考慮すれば、上の図の左側のような「仮想的な直列抵抗」と想定できる。

今回、「コレクタ遮断電流対策あり」とするには、RBE = 1.0kΩの抵抗を並列に接続すると仮定できるため、上の図にあるようにトランジスタ側は合成抵抗0.9kΩと仮定できる。この抵抗値とベース抵抗RBで1.0Vと4.0Vの分圧を引き受けるとすると、RB : 0.9kΩ = 4.0V : 1.0V の関係となり、RB = 0.9 × 4.0 = 3.6kΩ

RB = 3.6kΩでも、流れる電流は I = 4.0V / 3.6kΩ = 1.1mA とPICマイコンの最大電流量25mAを越えないため問題はない。

20160214-transistor-switch2.png
コレクタ遮断電流ICBO対策を行った回路図