29 April 2013

京都 : 二尊院のモミジ、祇王寺の苔庭

新緑が美しい洛西の古刹である二尊院と祇王寺を訪ねた。

阪急嵐山駅に近い二尊院にまず向かう。平安時代初期に嵯峨天皇の勅により円仁が建立した寺院で、藤原摂関家の二条家・鷹司家(以上五摂家)、三条家・四条家・三条西家などの菩提寺で小倉山の斜面に広がる境内には代々の墓が建てられている。

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二尊院 参道のイロハモミジとキリシマツツジ(霧島躑躅)

総門から本堂へ登ってゆく一本道の参道はモミジとキリシマツツジの並木道となっている。“紅葉の馬場”と呼ばれ秋には沢山の人で賑わうが、この季節は観光客もほとんど居らず写真撮影はかなり楽だ。

この参道の入り口付近に“西行法師庵の跡”という碑があり、傍らには

“我かものと 秋の梢を思うかな 小倉の里に 家居せしよ里”
(西行法師)

の歌碑

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二尊院 参道のキリシマツツジ(霧島躑躅)

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二尊院 参道のキリシマツツジ(霧島躑躅)


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二尊院 参道(紅葉の馬場)


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二尊院 参道のイロハモミジ


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二尊院 本堂と龍神遊行の庭

ここにも歌碑があり

軒端の松
“志のばれむ ものともなしに 小倉山 軒端の松ぞ なれて久しき”
(藤原定家)

本堂の前の庭を“龍神遊行の庭”といい、その北の端に満開の普賢象桜が咲いている。


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二尊院 九頭竜弁財天堂と普賢象桜


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二尊院 普賢象桜

室町時代からあるといわれる古い品種で、130枚からの花びらがつく八重の里桜。遅咲きの大阪造幣局の里桜でさえ1週間以上前に散ってしまっているのに、ここの桜は5月の連休まで咲くという。


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二尊院 小倉餡発祥の地の記念碑

石碑の裏面に書かれた説明によれば…

“日本で初めて小豆と砂糖で餡が炊かれたのは、京都に於いて平安京が出来て間もなくの820年のことであります。
当時、このあたり小倉の里に和三郎という菓子職人がいて、亀の子せんべいを作っていましたが809年に空海が中国から持ち帰った小豆の種子を栽培し、それに御所から下賜された砂糖を加え、煮つめて餡を作り、これを毎年御所に献上されました。その後、この和三郎の努力で洛西を中心に小豆が広く栽培され、江戸時代には茶道の菓子にも用いられ、ハレの料理にも加えられるようになりました。”

ということで、小倉山の麓で初めて作られたので“小倉餡”と命名されたという事だそうだ。


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二尊院 本堂裏手の地蔵


本堂横より小倉山斜面の階段を登ると、法然上人廟がある

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二尊院 法然上人廟

そこから林の中の道を少し行くと、見晴らしの良い高台に藤原定家百人一首を選定した場所と言われる時雨亭跡がある。

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二尊院 時雨亭跡から北東方向の眺め

嵯峨野の町並みの向こうの山、中央辺りに嵯峨天皇陵や直指庵があり、その麓の少し右側に大覚寺が見えている。


麓に下りる途中、法然上人廟の横より墓所を通ってゆく。法然上人廟の横には真新しく修復された嵯峨家の墓所があり、そこから先にはかなり古そうな墓が並んでいる。

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二尊院 三条西実枝 三条西公条、三条西実隆の墳墓(五輪塔)

藤原家や三条西家、鷹司家の墓がずらっと並んでいるが、その中に毛利氏の家紋を付けた墓があった。


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二尊院 妙池院(毛利重就の娘・佐代子)の墓

江戸時代の長州藩藩主 毛利重就の娘で、鷹司政煕の母である毛利佐代子(惟保局)の墓ということで、死んでからも毛利氏の家紋を掲げているという事なのだろうか。


北端には三帝陵と呼ばれる天皇の供養塔がある。

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二尊院 三帝陵(亀山天皇、後嵯峨天皇、土御門天皇)

手前の亀山天皇の供養塔のみ、宝篋印塔だ。

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二尊院 本堂

後奈良天皇による勅額が掲げられている。


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二尊院 勅使門横のヤマモミジ


二尊院を出て、北側にある祇王寺へ。平清盛に使えた白拍子 祇王仏御前が出家し入寺した場所とも伝えられている。

昨年のNHK大河ドラマ「平清盛」で、このあたりの話は盛り込まれていたので、平安時代末期の歴史だが身近に感じられる。

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祇王寺 苔庭の門


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祇王寺 苔庭


苔はどれも見事で、近寄ってみると

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祇王寺 タチゴケ(立苔)

おそらくタチゴケだと思います。

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祇王寺 オオシッポゴケ(大尻尾苔)


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祇王寺 苔庭


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祇王寺 草庵

大日如来像や祇王像、平清盛像などが左側の仏壇に安置されている。奥の丸い窓は吉野窓といって、斜めに編まれている竹と、窓の外に見える直立した竹林の対比の美しさを魅せる意図ということだ。